【特集】「日本共産党の百年」を考える

特集を始めるに当たって/日本共産党はどこへ向かうのか

 2023年、日本共産党が創立100年を迎えた。その役割と影響力は大きく、日本共産党の存在を抜きにして、日本の政治と社会運動を語ることはできない。

しかし、社会運動や左翼のなかでは、日本共産党はむしろ厳しい批判にさらされ続けてきた。その政治路線のナショナリズム的偏向、大衆運動(例えば原水禁運動)に対する誤った方針の押し付け、大衆的な実力闘争(例えば全共闘運動や三里塚闘争)への敵対、民主集中制に体現される硬直した組織体質などからすれば、当然のことであった。除名されたり離党した多くの人間に対する理不尽な仕打ちが、共産党に対する批判や糾弾を憎悪や怨嗟をともなうものにしてきたことも事実である。だが、共産党は、外からの批判を真摯に受け入れて誤りを認め、政治路線や組織のあり方を変えていく自己変革の努力や能力にもいちじるしく欠けてきた。刊行された『日本共産党の百年』を読んでも、ソ連・中国の覇権主義とたたかって「自主独立」を貫いてきたという自己弁護に終始している。

 とはいえ、日本共産党は、他の先進国の共産党が衰退・消滅したのとは違って例外的に、国会のなかで21名の議席を占め無視できない影響力を発揮してきた。日本の政治が安倍政権の下で右傾化・保守化を強めリベラル・左翼の勢力が弱体化しているなかで、左翼としての原則的立場をある程度まで保持してきた。また、脱原発や安保法制反対など多くの運動や野党共闘の場では、共産党と非共産党系の活動家が協力・共闘する姿も増えてきた。

 しかし、いま日本共産党自体がかつてない危機に陥っている。10年前(2014年)の総選挙(衆院比例代表)では606万票、20議席を獲得していたが、2021年の総選挙では416万票、9議席に減らし、2022年参院選(比例代表)では361万票にまで落ち込んだ。今年の統一自治体選挙でも県議・政令市議選で44議席、市区町村議選で91議席を失い、大幅に後退した。党員数もこの17年間で40万人から26万人へ、「しんぶん赤旗」読者も164万人から90万人に減っている。党員も読者も高齢化が目立つ。何よりも、命運を賭けてきた野党共闘の推進という方針が行き詰まり、自公政権や自民・維新の連合政治に対する政治的反撃にうって出る展望を見出せないでいる。

 日本共産党の深刻な衰退と危機は、けっして他人事ではない。それは、日本の左翼の衰退と危機の表われでもあり、その一部である。この連載では、日本共産党の歴史的歩みと現状を批判的に検証し、この党がどこへ向かおうとしているかを考察する。そのことは、日本の左翼の衰退と危機の現実と原因を掘り下げて捉え返し、再生の可能性を探る作業でもある。(白川真澄)

 

『日本共産党の百年』を読む

『日本共産党の百年』――どこが変わったか [上] 加藤寛崇

はじめに――出版された時期の共産党を取り巻く状況  2023年、20年ぶりに『日本共産党の百年』という本が出版された。先行してタブロイド判が7月に出版され、書籍は10月に刊行された。[…]  

『日本共産党の百年』――どこが変わったか [中] 加藤寛崇

<第3章 1960~70年代> 〇 ソ中の核実験を防衛的なものと評価したのが間違っていたと表明  『100年史』146-147頁[24頁]では、ソ連の核実験(61年8月)や中国の核実験 […]

『日本共産党の百年』――どこが変わったか [下] 加藤寛崇

<第5章 2000年代~>〇 第22回大会(2000年11月)1 『80年史』より高い位置づけに 第22回大会について、『100年史』260-261頁[45頁]においては、「党の新しい発展段階にそくして、 […]

書評対談 第2回  『日本共産党の百年』を読む  武藤一羊 X 白川真澄