2026年総選挙について(要綱)

2026年総選挙について(要綱)

高市自民党の圧勝とリベラル・左派の壊滅的敗北、「焼野原」からの大胆な再出発を
                          2026年2月   白川真澄

Ⅰ 26年2月衆院選の結果

1 獲得議席、比例区得票

      獲得議席  増減  比例区得票  得票率  24年     増減

自民党    316     118  2102.6万票  36.7%    1458.2     644.4万票

維新の会     36     2    494.3      8.6     510.5    ▼16.2

参政党      15    13     426.0      7.4     187.0   239.0

保守党       0    ▼1    145.5      2.5        114.0     31.5   

国民民主党    28        1    557.2      9.7     617.2    ▼60.0

中道       49    ▼118   1043.8    18.2      1752.8     ▼709.0
(立憲+公明)

共産党       4   ▼4   251.9    4.4         336.2    ▼84.3

れいわ       1   ▼7   167.2    2.9         380.5     ▼213.3

社民党       0   ±0     72.8    1.3      93.4    ▼20.6

みらい      11      11     381.3      6.7        0     381.3

減税ゆう      1   ▼4      8     1.4        0       81.4

無所属    4    ▼6

※投票率:56.26%、前回(24年)の53.85%を2.41%上回り、前々回(21年)の55.92%をも0.34%上回った。投票者総数は5806.6万人で、前回より346.7万人多かった。

※女性の当選者:68人で、前回より5人少なかったが過去2番目。全当選者の14.6%で、前回より1.1%少なかった。

Ⅱ 自民党=高市の圧勝

1 右翼・保守支持の流れがいっそう強まる

(1)自民・維新プラス参政で圧倒的な多数

 *自民は、前回(24年)に参政プラス保守に流れた右翼・保守支持の票を取り戻したが、参政も議席と得票を増やした。自民・維新と参政・保守を合わせた右翼・保守は、  132増の367議席、898.7万票増の3168.4万票を獲得し、圧倒的な多数を握った。自民は、小選挙区制ではその利点を活かして49%の得票率で86%の議席占有率を獲得した。

 *右翼・保守の固い支持層は、2600万票(2585.9万票、4つの国政選挙での平均)と推測できる/2355.6万票(自民・公明・保守・参政の比例票、24年総選挙)、2702万票(自民・公明、21年総選挙)、2842.5万票(自民・公明・保守・参政、25年参院選)、2443.7万票(自民・公明、22年参院選)。

 *したがって、今回は582万票も増やして3100万票台(3168万票)に乗せた大勝であり、右翼・保守支持の流れが勢いを増した。

 *今回に自民党が大量の票を獲得できたのは、参政や保守に投票した人の支持を取り戻しただけではなく、無党派層から多くの支持を再び得ることによってである。

  ・25年参院選で参政に投票した人の18%、保守に投票した人の16%が、今回は自民党に投票した(朝日2月9日)

  ・無党派層は、選挙区で40%が自民に投票し、33%の中道を上回った/24年は、選挙区で46%が立憲に投票し、自民に投票した22%を圧倒した(同上)

(2)無党派層の支持を引き寄せたことも含めて自民の高い支持は、高市個人への高い支持によってもたらされた

*高市の演説会に聴衆があふれる、ポスターが引っ張りだこになる、高市グッズが飛ぶように売れるなど、高市のアイドル化が起こった/高市が「推し活」の中心に座り、「逆境下のヒロインへの批判や抵抗が強まれば強まるほど『かわいそう』と推し活が加速する無敵の構図が生まれた」(日経26年2月11日「『推し活』選挙 政党政治溶かす」)。すなわち、「台湾有事」発言で日中関係を悪化させたり、「円安ほくほく」とインフレ加速の円安を弁護したりする失態は、支持率を低下させる材料になるはず。だが、批判が高まれば高まるほど高市を「かわいそう」「頑張っている」と擁護する空気が広がった。こうなると、政策の中身や是非はもはやどうでもよくなってしまう。

*その意味で、自民党への支持の高まりには、カリスマ性をもつ指導者への熱狂というポピュリズムの力学が働いている/「わたくし高市が総理であるのが良いのかどうか、国民のみなさまに決めていただく」と、高市への「白紙委任」を求め、総選挙を「信任投票」にすり替えた戦術が功を奏した。

*政治的・政策的な争点ではなく、党首個人への評価=人気が選択の決め手になった理由の1つは、消費税減税の大合唱に野党が埋没し明確な争点が消されたことにある。みらいを除く全野党が食料品などの消費税減税を掲げたことに対して、高市も食料品の消費税2年間の減税を持ち出して争点を見えなくさせることに成功した。言い換えると、高市の「積極財政」による「強い経済」「経済成長」に明確に対抗できる提案、すなわち経済成長や減税ではなく例えばケア・生活インフラ・食と農・再エネへの財政投入と公正な増税を対置できなかったからである。みらいが消費税減税論と一線を画したことで支持を増やしたことは示唆的。

(3)右翼・保守に走る高市の姿勢や政策への共感が生まれていた。

 *対中関係で突っ張る姿勢/「高市首相の中国に対する姿勢を評価する」55%、「評価しない」30%(朝日世論調査12月20~21日)。

*「積極財政」による経済成長への期待・幻想の強さ/「国の借金が増えても、経済成長を目指して国の支出を増やすことはよい」46%、「よくない」42%(同)

*同時に、「日中関係悪化による経済への影響を心配している」53%、「心配していない」45%(同)。「国の財政が悪化する不安を感じる」71%、「感じない」29%(同)。「物価が上がっていることに対する高市首相の対応を評価しない」47%、「評価する」39%(朝日世論調査1月17~18日)と、不安や危惧がやや上回っている。

(4)ポピュリズムの顕著な現われ/チームみらいはなぜ躍進したのか

 *消費税減税の大合唱のなかで、消費税減税ではなく社会保険料引き下げで独自性を発揮。

 *安野党首に代表される若い政治的リーダーへの共感が働いた。

 *若い世代=働く世代の利益を重視する姿勢への支持/社会保険料引き下げと高齢者の医療負担3割。

 *デジタルを最大限に活用した政治や行政という新しいイメージへの期待

 *比例区でみらいに投票した人のうち36%は、小選挙区で自民党の候補を選んだ(日経26年2月15日「風見鶏」)。みらいは、基本的には新自由主義の潮流と言える。

 *無党派層の投票先としては比例代表では17.5%と、自民党の21.8%に次ぐ第2位であった(共同通信の出口調査、日経26年2月13日)。

Ⅲ リベラル勢力の壊滅、左派の消滅の危機

1 リベラル勢力の壊滅

(1)「中道」(立憲+公明)は、118議席を失って49議席に転落し、比例区得票数も前回(24年)から709万票も減らした。参院選比例区の得票(25年)からも216.9万票を失ったことになる。その結果、議会内での対抗力を喪失した。

 *単独で内閣不信任案を提出することができなくなった

 *与党が衆院で再可決のカード(3分の2以上)を握ったために、野党は参院での多数派であることを活かせない。

 *改憲発議を阻止する力の喪失/自民・維新が衆院で3分の2以上を占有、ただし参院では改憲発議は困難

(2)「中道」の大きな敗因は、若い世代の支持をまったく獲得できなかったことにある。

 *10~50代の「中道」の支持率は6.5%にすぎず、自民の36.6%に圧倒され、国民の10.6%、参政の8.4%、維新の6.9%の後塵を拝した(共同通信の出口調査)。10~50代の得票で、自民は前回衆院選(24年)よりも8.7㌽増やした。なお、れいわは2.4%、共産は2.3%と、みらいの4.9%にまったく及ばなかった。

 *「中道」は60代以上で20.5%の支持を獲得し、自民党の42.4%に次いで第2位となった(同)。共産も4.8%の支持を獲得し、維新の6.8%に次いで野党の第3位であった。リベラル・左派は、60歳以上の高齢者世代のなかで辛うじて支持を確保し、政治勢力として存立することができている。

 *別の調査(日経とテレビ東京の2月13~15日の世論調査)によれば、「中道」は18~39歳ではわずか3%の支持率にとどまり、60歳以上で何とか13%の支持を得ている。自民は18~39歳で37%の支持を獲得し、全体で41%と昨年の参院選直後よりも17㌽上昇させた。18~39歳では国民が16%、みらいが8%、参政が7%、維新が3%の支持を獲得したが、共産とれいわは1%の支持に落ち込んだ(日経2月17日)。

(3)「中道」は、公明との合同以前にすでにリベラル勢力としての政治的アイデンティティを変質・消滅させていた。すなわち、立憲そのものが右旋回し、リベラル勢力としての内実を放棄し、従来の支持者を失望させ離反させていた/安保法制の違憲性の否認、原発再稼働の容認。

 *リベラル勢力は、国家の利益や権威よりも個人の自由を最優先することを特徴とする。日本では、軍事を抑制する憲法平和主義(9条護憲)を固有のアイデンティティとしてきた。だが、ロシアのウクライナ侵略(22年2月)は、日本社会に強い衝撃を与え、防衛費の増額による軍事力拡大を支持する意識を急激に増やすことになった。

 *福島原発事故の衝撃から脱原発が社会の多数派に転じてきた。しかし、電気代の値上がりなどのなかで再稼働への賛成が増え、現在では反対を大きく上回るようになった(23年2月の朝日世論調査で、賛成51%と反対42%を逆転、26年2月の調査では賛成51%に対して反対35%)。

 *こうした社会の意識の右傾化に引きずられるように、立憲は安保法制や原発再稼働に対する原則的な立場をなしくずし的に捨て去ってきた。

2 左派の消滅の危機

(1)左派3党(共産・れいわ・社民)は11議席の大幅減で、わずか5議席に転落した。衆院で代表質問をすることもできなくなり、政権批判の重要な武器を失った。比例得票は前回(24年)の810.1万票から4割減の491.9万票に低落した。

(2)共産党は衰退傾向に歯止めをかけられなかった。

 *総選挙の獲得議席は10(21年) → 8(24年) → 4(今回)、比例区得票数は416万票(21年) → 336万票(24年) → 252万票と大きく減少し、衰退傾向にストップをかけられなかった。2014年の総選挙では21議席、606万票を獲得し、安倍政権と対抗する先頭に立った姿からは程遠い凋落ぶりである。

 *メンバーの高齢化による組織力の衰退(公明と同じ)が大きな要因だが、高市政権との対抗軸が定まらず、政治的・政策的主張に鋭さを欠いた。

(3)れいわは、左派ポピュリズムの限界を露呈して凋落した

 *獲得議席は前回から7議席減の1議席、比例区得票が213万減の167万票と、急激に落ち込んだ。25年参院選の比例区得票387.9万票からも220.7万票を失った。

 *山本太郎の「個人商店」としての性質が強かったが、山本が議員辞職し先頭に立てなくなったことによって党の魅力が失われてしまった。参政党が地方組織を拡大・強化してきたのと比べて、党首の個人的魅力に頼るポピュリズム政党の限界をいち早く露呈した。

 *一貫した主張の「消費税廃止」は、消費税減税の大合唱に埋没し、賞味期限切れになった。国債発行に頼る「積極財政」論は、高市の「責任ある積極財政」と差異化できなかった。れいわが事実上依拠するMMTは、デフレ不況の時期には共感を呼ぶ面がある。だが、インフレの時代に移った現在では、「2%インフレ」目標を肯定する主張はインフレを擁護する役割を演じている。

(4)高市の「強い経済」・経済成長の路線に、左派はソフトな経済成長の路線で対抗しようとして呑み込まれた。

 *れいわは「消費税廃止で景気をあげる」と、ズブズブの経済成長路線を掲げている。

 *共産党は、「大株主・大企業応援から国民の暮らし第一の政治を」と所得再分配政策を前面に出しているが、経済成長主義への真正面からの批判が欠落している。

 *左派は、高市の「経済を再び力強く成長させ、国民一人ひとりの所得を着実に引き上げ、豊かな社会をつくる」(自民党の選挙公約)に対してラディカルな批判と対抗ができていない。

Ⅳ 政治が世代間で引き裂かれる/政治の質的な変化

1 政治的対抗軸の大きな変化

(1)これまでの‟右か左か”(「保守VS革新」→「保守・ネオリベVSリベラル・左翼」)の対抗軸に代わって、世代間の差異・対立(若い世代=現役世代VS高齢世代=引退世代)が新しい対抗軸として浮上してきた。

 *国民やみらいは、若い世代=現役世代の利益を優先することを主張/国民の「現役世代の手取りを増やす」政策が若い世代の支持を引き付けている(24年総選挙から今回の総選挙へ)。みらいの社会保険料引き下げの主張も、現役世代の重い負担軽減を主張し共感を呼んだ。

 *しかし、こうした若い世代=現役世代の利害優先の主張は、世代間対立を拡大・激化させる危険な政治手法になる。

 *自民党は、政治的リーダーのイメージ転換(女性首相の登場、本音で語るパフォーマンスなど)によって若い世代の支持を取り戻した。

(2)さらに政治的・政策的なイシューが政治選択の基準にならず、政治的リーダー=党首個人の人気・魅力が政治選択の基準になっている。

*その1つの理由は、野党が減税ポピュリズムに走り、高市政権に対する明確で長期的な政治的・政策的対決点を対置できなかったことにある。

2 SNSの政治的効果がいっそう大きくなった。

(1)ユーチューブ動画は、前回(24年総選挙)の10倍に達した。

 *「選挙ドットコム」によれば、総選挙の期間中に選挙に関連したユーチューブ動画は、約9万本投稿され、総再生回数は約28億回に上った。これは、前回(24年総選挙)の10倍にもなる。

 *政党別では、自民党に関するものが約2億3千万回で最も多く、次いで「中道」が約1億4千万回だった。昨年の参院選でトップだった参政党は伸び悩んだ。個人別では、高市に関する動画が4億5千万回と突出していた。

(2)SNS重視層の多数は自民党に投票し、ほとんど「中道」には投票しなかった。

 *政治に関するSNSの情報を重視している層(28%、重視していない69%)は、比例区投票先が自民36%、「中道」4%であった(なお国民9%、参政6%、みらい4%、れいわ3%、共産2%)。SNSを重視していない層での自民30%、「中道」14%に比べると、SNS重視層では自民支持が圧倒した。

 *政党や候補者以外の「第三者(サードパーティ)」の投稿が8割を占め、多くが動画を編集して投稿する「切り抜き系」チャンネルだった。高市を動画にすれば数字がとれ、数字が取れるから人気が出るというサイクルができて、サードパーティを巻き込んだ独走状態だった(朝日2月23日)。

3 世界的には、左派は消滅していないどころか力強く再生している。

(1)資本主義の本場である米国では、ニューヨーク市長選で民主社会主義者のマムダニが勝利した。

*インフレの進行、貧富の格差の拡大に対して、マニダムは賃貸住宅の家賃の凍結、市営バスの無料化、公営スーパーの設置、財源としての高所得層への増税を掲げて、若年層や労働者からの支持を獲得した。

(2)イギリスでは、労働党を離れたコービンがスルタナと組んで新党「Your Party」を結成し、多数のメンバーを結集している。

*スターマー労働党政権の政策(イスラエルを支持してガザ虐殺を擁護、民間住宅の家賃値上がりの放置など)に不満と批判を強める人びとの支持を獲得している。

*党員になる可能性をもつ登録メンバーは65万人となっている。

*緑の党も支持を拡大していて、競合関係にある。

(3)情報・金融化資本主義のもとでの巨大格差の進行は、人びとのなかで批判と怒りを高め、左派の存在価値を強めている。例えば住宅問題、家賃の高騰が大きな争点になり、家賃の凍結を主張する左派が強い支持を受けている。

(4)世界的な流れからすれば、日本の左派の衰退は特殊例外的であると言える。一国的な視野と枠組みのなかに閉じこもって左派の衰退を嘆くのをやめよう。

 *2015年の安保法制反対の行動から10年、街頭での大きなデモや行動が起こらず、左派の政治的基盤が衰弱してきた。

 *金融資産の格差の急激な拡大、生活への不安の広がり(排外主義の噴出へ)といった社会状況は同じだが、日本では左派が支持を得られず衰退の一途をたどっている。れいわの左派ポピュリズムが左派の再生を肩代わりするかにみえたが(24年総選挙と25年参院選まで、共産党に代わって380万票を獲得)、早くも凋落した。

 *左派が若い世代の支持を獲得できず、活動家の高齢化や思想・理論のラディカルさ(情報・金融化資本主義への批判)の喪失に陥っているのは、なぜか。徹底的に掘り下げ、討論する必要に迫られている。

Ⅴ 高市政権の暴走に対して、どう対抗するか

1 高市政権はどこまで暴走するか

(1)戦後日本国家に最終的に幕を下ろそうとしている

*「戦後日本国家」を成り立たせてきた要素/4本柱:憲法平和主義、民主主義(民意の反映、野党3分の1)、立憲主義(国家権力行使の制限)、象徴天皇制。大前提:米国への依存・従属。

*憲法平和主義、民主主義、立憲主義の抹殺/改憲国民投票の実施への強い意欲、殺傷兵器の輸出解禁、安保3文書の改訂(防衛費の大幅な増額)、非核3原則の見直し(核持ち込みの許容)、国家情報局の設置、スパイ防止法の制定、外国人の入国制限、皇室典範の改定

*日米同盟=米国への依存・従属を固持しようとするが、トランプの側から抜本的な見直し・再編が起こっている。「ドンロー主義」の下で日本は見放されるのではないかという不安や危機感が広がりつつある。

(2)高市の暴走に付きまとう立往生や脱線転覆の可能性①/対中関係の悪化による国際的な孤立化。

 *「台湾有事」発言をきっかけに対中関係の悪化・緊張が続いている。しかし、米日を除くG7の国々は、トランプの「ドンロー主義」に直面して中国との対話・協力を進め(イギリス、ドイツ、フランス、カナダの首脳の相次ぐ訪中)、「ミドルパワーの結束」(カーニー演説)に踏み出している。さらにトランプ自身が対中対話(3月訪中)を試みている。

*日本はこの国際的な流れから唯一例外的に外れて、対中敵視・米国への依存・従属という時代遅れの道を走っている。すでに、レアアースの輸出規制やインバウンドの激減などの影響が出ているが、いっそうの孤立化が進む可能性がある。

(3)高市の暴走に付きまとう立往生や脱線転覆の可能性②円安インフレが止まらず、経済成長も実現できない

 *財源なき「無責任な積極財政」は、財政悪化への不安から金融市場の危機/円安・国債売り・株安(日本版トラスショック)を引き起こす可能性がある

 *物価高対策が効果をあげず、インフレが続くことへの不満の累積と拡大 → 高い内閣支持率の低落/いかなる政権もインフレには勝てない、という法則性が作用する。

 *急激な労働力不足の進行が潜在的成長率をゼロ%台に押し下げている(25年上半期で0.66%)時代に,AI・半導体や防衛産業への投資で経済成長を復活させるという路線は幻想にすぎず破産するだろう。6万円に近づく株高に酔いしれているが、アベノミクスの失敗をもっと悲惨な形で繰り返す可能性がある。

※高市政権の経済政策に対する批判については、白川「高市『積極財政』が人びとの生活を苦しめる」(PP研WEB、2025年12月6日)。

2 どこから反攻に転じていくか/「焼野原」からの大胆な再出発を

(1)原理・原則に立ちかえり、長期的な社会ビジョンと政治的主張をしっかり立てて、ぶれずに主張する

〈高市の経済成長主義に対決し、脱成長の経済・社会を創る〉

 *高市の経済成長主義(「とにかく成長のスィッチを押して、押して、押して、押しまくってまいります」施政方針演説、2月20日)に真っ向から対決して、いまこそ脱成長へ。経済成長に頼らなくても、安定した生活と雇用を保障する経済は可能である。

 *高市の「強い経済」・経済成長のためのAI・半導体など17の戦略分野への投資ではなく、ケア(介護・医療)、生活インフラ、食と農、再エネの分野に人手と資金を重点的に投入する。

 *自己責任や「個人の手取り増大」ではなく、連帯・助け合い・公共サービスの拡充をめざす。

 *経済成長やインフレによる税収増や国債増発ではなく、富裕層や大企業に対する課税強化、給付付き税額控除を導入しながら消費税率の維持によって財源確保をする。

 *高市政権に対峙する際に、改憲・極右政権とだけ規定するのは一面的。安倍政権との対抗で苦労した経験からすれば、改憲・極右だけではなく経済成長主義の政権であることを明確にしよう。

〈米中対立を超えて、対話と交流によるアジアの平和を構築する〉

*対米依存・従属から脱却し、ミドルパワーの連携・グローバルサウスとの連帯を実現する。

*高市の「台湾有事」発言(集団的自衛権の行使による中国との戦争)をただちに撤回し、南西諸島への長射程ミサイル配備をやめる。韓国やASEAN諸国と連携しながら中国との軍縮交渉を進める。

*軍事費の増額を中止し、安保法制を廃棄する。沖縄の辺野古基地建設を中止する。

(2)地域から住民の自治、自立した地方政府の樹立、社会的連帯経済の創出、現代的コモンの再生を推進する。

 *市民・住民参加型の地方自治体=地方政府を形成し、市民・住民の力が発揮できる事例を創出する/杉並区や小田原市などをモデルに。

(3)魅力的な政治的リーダーとなりうる新しい人材を発掘し養成する。

(4)SNSの効果的な使い方を創出する。

(5)社会運動のさまざまの分野の活動家の協議と討論を組織しながら、左派の協力と共同行動を維持し、左派・リベラルの勢力の再生を進める。

 *現在の状況に危機感を共有する運動体・NPO・左派政党などの活動家の開かれた横断的な討論と協議を組織する。

                  [26年2月27日]記

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