第22回「経済・財政・金融を読む会」

第22回「経済・財政・金融を読む会」

みなさま。秋を飛び越して一気に寒くなりましたが、お変わりありませんか。

物価高が私たちの生活を苦しめ続けていますが、22年春以降の2%超えインフレの大きな要因の1つは、いうまでもなく円安です。高市政権も野党も、物価高対策と称して消費税減税やガソリン暫定税率の廃止を提唱していますが、円安インフレの進行にもかかわらず円安に対する有効な対策を語ろうとしません。円安は直接には、米国の利下げが進まない一方で日本が金融緩和を継続しているために日米間の金利差が大きいことから来ています。高市首相に至っては、デフレ脱却の政策であったアベノミクスの継承を謳い、金融正常化=金利引き上げを否定しています(25年度末の国債残高1129兆円という巨額の政府累積債務が国債の利払い額を急増させることが金利引き上げをを難しくしていることも確かですが)。

しかし、円安の継続は、日米間の金利差からだけだけではなく、日本経済の構造変化から来ていると考えられます。すなわち、経常収支(第一次所得収支を中心にした)の黒字が巨額なものになっているにもかかわらず、貿易・サービス収支が大幅な赤字に陥っていて円売りが生じているからです。とくにサービス収支は、インバウンドの増大による黒字を超えて米国の巨大テック企業に支払う「デジタル赤字」が膨らんでいます。他方で、日本の企業が海外で稼ぐ証券投資収益(利子や配当金)と直接投資のうちの再投資収益は、日本に還流せず円買いにつながっていません。情報化資本主義が急速に進展し、また海外投資の利益が国内に還流されないという構造変化が円安の基底にあると思われます。

そこで、「円安」の問題を国際収支の分析を通じて詳しく追求し、「弱い円」の要因と「仮面の黒字国」を分析してきた唐鎌大輔さんの『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』をテキストに使って、日本経済の構造変化を見てみたいと思います。国際収支や為替の変動は専門的で難しく感じますが、ひじょうに分かりやすい新書です。このテーマに関心のある方は、ぜひご参加ください。オンラインでの開催になりますので、あらかじめお申込みください。(白川真澄)

第22回経済・財政・金融を読む会

  • 日時:11月29日(土) 13:30~16:30
  • テキスト:唐鎌大輔『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経プレミアシリーズ、2024年)
  • 報告者:長澤淑夫
  • オンラインでの報告と討論
  • 参加費:無料

オンライン形式で行いますので、参加をご希望の方は下記のボタンよりお申し込みをお願いします。

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