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オルタナティブ提言の会

第9回 原理・原則をどう考えるか
2010年4月18日(日)

前回宿題となった「原理・原則をどう考えるか」を10人が提出した。それらに基づいて議論をおこなった。

◎資本主義、非資本主義、反資本主義 

◆「反資本主義」をどう表現するか

・ 資本主義か非資本主義かの議論については、またやるのか、といううんざりした気持ちだ。資本主義をどう規定するかをあいまいにしたまま議論してもしかたない。資本主義というのであれば、従来あるような言い方はだめで、何を資本主義的というのかを明確にする必要がある。

・ 非資本主義か資本主義かということを言葉で表現する必要はないのではないか。大事なのは反資本主義なるものの中身。それはいろいろだされるだろう。

・ 反資本主義に向うプロセスとして非資本主義が必要、というのが前提だろう。反資本主義と言わないとおさまらない人々はかなりいる。体制選択的な立て方はしない、という方向で合意できるかどうか。

・ 具体的にどこまで市場をコントロールできるか、という問題もある。

・ 今日は国富さん、なすびさんが来ていないから議論ができないが、反資本主義といった表現をすべきだという強い意見なのかどうか、そこは聞いてみたほうがいいだろう。

・ 前文で、こういう原理で動いている現状を変えなければならない、という表現をすれば、読んだ人が自由に解釈するだろう。

・ それといまの状況をどう捉えるか、という問題はある。ただ資本主義といっただけでは不十分。Civilzation craisis 文明的危機という言い方があるが、温暖化問題とか、中国・インドの急成長がどうなるのか。このままいけばどこへいくのか。それは明らかに資本主義原理のゴジラ化であることに間違いないが、いわゆる生産力と生産関係とかそういった捉え方ではなく、とくに社会主義が転んでしまってから手放しに拡大している現行制度がひじょうに危険な、破滅的なところにきているという認識が重要。その名前をどうつけるかは、これからでいい。はっきりしているのは一国社会主義は破綻しているということ。言葉の問題というより認識の問題としてはっきり打ち出したらいい。

・ エコロジカルな観点からいえば、文明論の危機はその問題から始まっている。地球全体から問題を立てている人たちもいる。そういう論議も充分組み込んでいく方向が必要。
なすびが書いている運動論は、かつての革命感、体制選択とはまったく関係ない。この運動論でいったら、前の反資本主義とどういう関係になるのかわからないから聞いてみたい。討論が足りないということはあるだろう。それから原則主義的な反資本主義もあったほうがいい。

◆反資本主義の地盤

・ もうひとつ、反資本主義というものが出てくる地盤が出てきている、ということを認識したほうがいい。彼らはトータルに「現状はだめ」と言いたい。

・ その反資本主義はマルクス主義ではなくて、アナーキズムの文脈で出てきている。科学的な理論付けなど必要ない、という立場。そういう人たちが世界的に動き出しているのが現実。

・ 大きな運動は必ずそういう側面を伴う。現状の行き詰まりに対する抵抗の中に反資本主義が出てきているということへ肯定的に言及する必要ある。

・ 反資本主義という言葉もマルクス主義の図式から解放して使わなくてはいけない。

・ 資本主義をちょっと修正しただけではどうしようもなくなっているということ。

・ 反グローバリズムにおいて言われている反資本主義というのは、反グローバリゼーションとイコールか。またシステムといったときに、市場システムのことなのか、あるいは競争原理的システムのことなのか、そこをはっきりさせてから言うべき。

・ たとえば金融の暴走とか市場の独裁とか、利益追求の暴走とか、労働力の商品化、欲望の肥大化とか、そういうことを具体的に否定していくことになるだろう。

・ 現状認識のところできちんと指摘するということが必要。

◎欲望の規制について

・ たとえば若者の車ばなれなど、欲求の増殖自体が飽和している、という議論はある。

・ 欲望を統制するのはファシズムだという議論もある。資本の自己増殖、という問題の立て方はわかるが、それを欲望に置き換えるのはどうか。社会主義の失敗をどう評価するかという問題もある。庶民の欲望は統制できない。社会主義はそれを計量化して正しいもの、正しくないものとわけようとして失敗した。

・ 基礎的なニーズがみたされない人たちが社会のなかに多数いる。そのニーズをみたすことをきちんとやるべきで、どうでもいい欲望とは区別したほうがいい。

・ いまは、欲望がつくられている。若者が車に興味がない、というのはおもろい現象。欲望は必ずしも肥大化するとはいえない。

・ 企業への規制は必要。かなりの部分は企業が欲望をつくる。

・ 個人的に欲望を抑えるのはいいが、企業に向っていうこととは違う。文化的に共通の了解をどう作っていくかというふうに考えた方がいい。

・ 文化とかライフスタイルの禁欲を説く必要はないと思うが、金融だって規制するわけだから、もうけたいという企業に対する欲望を規制するのは必要だろう。

・ 20年前のPP21ではdecent lifeということをいった。

・ 価値観の転換というより、もう少し深いところのパラダイムの転換と考えたい。競争社会が前提にあって、環境問題あるいは貧困問題を無視してもいい、それが適者生存だという資本主義が持っている根本的なパラダイムを違うパラダイムに転換していく。

・ そういう原始的な資本主義に対する修正は、所得の再配分とか、福祉的な政策という方法で行われてきた。福祉国家に戻ればいいのか?

・ そのなかには常に、勝った者は正義であるというある種の価値観が暗黙の前提として了解されている。それが根幹にある。

・ 勝者と敗者の間では、競争の土台が違っている。

・ 競争原理を全部否定するのかという問題はある。競争原理が働く中でモノが行き渡っていくということは現実にあって、そことのバランスをどうするか。
 福祉国家がでてきて、それが否定されて新自由主義がでてくる、それが再度否定されて、という共産党の新福祉国家論のようなものと私たちの目指すオルタナティブはどう違うのか。

・ グローバルな変革と一国的な変革ならびに主体の形成の関係のところで解くしかない。新福祉国家というのは一国的には無理だろう。しかし政府が何をやってもだめだから好きなように、ということにはならない。オルタナティブをいう場合に、一国的な論じ方をするけれども、そこでグローバルな変革との関係を出せるかどうかがポイントだろう。

・ もう立ち行かなくなって企業の社会的責任とかが出てきている。

・ 欲望を膨らませながら資本が自己増殖することは、環境と資源の問題から規制せざるを得ないということははっきりしている。

・ 情報的な欲望は無限に膨らませていいのか。

・ 情報の欲望を膨らませるのが金融資本主義。

・ あるいは科学技術で産む、産まないなどの問題もある。

・ それは人間はどこまで生命に手を入れていいのか、という倫理的問題で、環境問題とは別に語論しなければならないだろう。
 外なる資源に対する無制限の開発はだめということはかなり言われ始めたが、内なる資源というか、生命とか人間のあり方自体はノーガードの状況にある。

◎タイムスパンと現状認識

・ 何年先を考えるのかの議論は必要。「オルタナティブな社会」というときの社会が50年後なのか100年後なのいか、あるいは2、3年後なのか。必ず問われる。

・ 5年、10年のうちに方向転換しなければ、取り返しのつかないことになるという意見がある。いま出ている議論のなかで派遣法など1、2年の問題と、5年後、10年?20年後くらいに分けて議論してはどうか。

・ いろいろ批判はあるが、民主党政権にかわって裁判の判決とか情報開示などいい方へ変わってきている。短期といっても目先のことばかりでなくもう少し長期的な視点が必要。1年では短い。民主党政権が続く3年くらいが短期、自分がこの後生きている10年くらいが中期。その後50年くらいが長期というイメージでどうか。

・ 参議院選挙前あたりに出すということは、政治的オルタナティブ提言という意味合いもある。

・ 選挙前に出すことの意味は、短期のオルタナティブというよりも、原理原則のない状態で政治が漂流し始めている状況にたいして、我々のオルタナティブを出すことに意味がある。

・ 短期3?5年、中期10年?20年 長期50年?100年でどうか。100年の単位で考えれば、いまから動かなければいけない、ということになる。

・ いつまで、というものではなくて方向性を出すことが大事だろう。
 
◎ホットイシュー:日米安保、朝鮮学校無償化問題など

・ 3?5年で重要なのが日米関係をどう変えるか。それから実体的な力をもったアジアレベルでの民衆連帯ができるかどうか。とくに中国とかベトナムは我々がつながれるような相手の姿が見えていない。もうひとつ、国際関係レベルでのコモンセキュリティが達成できるか。普天間問題でいえば、アメリカとの再交渉の必要がある。それも3?5年のスパンが必要。

・ 中国や北朝鮮に対する疑問、問いかけに対して答えられる、あるいは議論できるものでなければいけない。

・ 20?30年先の米中日アジアの関係を見とおした上での、3?5年先を考えるべきだろう。
 
・ しかし日米安保はどうしようもないところに来ている。普天間問題は蓋をあけてしまったわけだから、そこは数年のスパンで考える必要はある。

・ よほどやり方のうまい政治家でなければ沖縄の怒りを抑えられない水準にきている。

・ 世論の地殻変動はあるのかどうか。米軍基地に関心がないのか、自分のところに来なければいいのか。

・ 国民的多数は自分のところへ来なければ関心はない。

・ それはそういう構造につくったから。基地と海兵隊を沖縄に移すことでヤマト政治から消した。

・ 沖縄は日本国家とある意味対等でやっている。その関係が持続して新しい局面にさらに進むのかどうか。

・ 一直線にはいかないと思うが、買収的なやり方ではだめなところにきていると思う。

・ パッケージ論の呪縛は大きい。

・ 交渉をすればいいのにそれをやらない。アメリカは日米関係が交渉関係になることを恐れている。

・ 項目のなかにもたとえば朝鮮学校の無償化問題なども入れて、具体性をもたせたほうがいい。日本列島の住民主権として抽象的な話だけではなく当たり前の平等概念の事例として。

・ すべての政策についてマニフェスト的に全部並べることはできないが、ここの原則はこういう形で現われる、という具体的なものを入れる。

・ ホットなイシューに関しては、具体的な問題を入れる。シングルイシューは蛸壺的になるからさまざまの問題のつながりが大きくわかるような形にする。

・ 具体的なものは選挙の争点になりそうなところに絞って入れたらいいのでは。

・ マスコミなどで言われていることにたいして、こちら側がどういう原則でみているか、ということを言えばいい。

・ 現状にたいする見方、歴史の段階がどこにあるのか、というようなことも書く。

◎環境問題の観点

・ 環境問題からの視点でいえば、数百年のスパンでの問題設定はよくある。しかし現状は、中国の成長を利用して経済を巻き返そうというもので、かなり危険だ。

・ CO2を減らしながら2%成長が可能という人もいる。そんなことは可能か。

・ COP15などでも、一人当たりの排出量は日本に比べて中国は5分の1で不公平、だから中国は出してもしかたがないのではという考え方はある。

・ 清貧の思想が必要。燃料を高くしたら消費者は工夫する。2世帯がいっしょに暮らせばいい。

・ 大量生産大量消費がだめ、という価値観の転換の必要はある。

・ 全世界が排出量を中国の一人当たりのレベルに抑えたら大丈夫なのか。そこまでやる必要があるのか? 世界的には2050年50%削減が目標、ということは中国は現状維持ではなくてもいいのでは? 今よりは増えてもいいというのが、グローバルには公正なのでは?

・ 中国は人口が多い、という問題もある。

・ 削減の必要は間違いなくある。その程度に差があるということ。

・ 消費者運動では、大量生産大量消費を続けてきたいまの状況は異常で、生活スタイルを変える必要はあるという認識。途上国が先進国の後追いをするのは拙いというのはあるが、それをこちら側から強制するかどうか。
環境問題でいうと、技術開発は非常に進んで、とくに環境汚染が拡大している。越境移動のバイオテクノロジーなどの問題がやっと取り上げられ始めた。
エネルギー問題では、原発推進はだめ。風力発電なども周辺では低周波などの被害が起きており、巨大化の問題はある。

・ 排出量取引は総量規制が甘ければ規制にならない。だが基本的には環境税とセットでないとダメだろう。EUでも環境税導入が言われ始めた。

・ 排出量の問題で一番大きいのは、「南」の排出権を買って「北」が排出する、ということ。

・ 経済界は環境税をやりたくないから排出権取引といっている。

・ 25%も削減したら産業界は海外へいかなければ、と言っている。あれはおかしい。

・ むしろ新しい技術を入れて25%削減を達成する、それが成長の鍵だ、という方向が強くなっている。

◎ベーシックインカムについて

・ みなゆっくり働けばいい話。いちばんいいのは不況。おかげで京都議定書だって達成できた。日本はワークシェアリングで十分暮らしていける。

・ 提言はベーシックインカムでいくのか。

・ 生存権が無条件に保障されるなら、それでいいのでは。

・ ベーシックインカムの水準をどうするかの問題はある。日本では国民年金は66,000円。これは生活保護水準を下回っている。これを上回らなくてはいけない。しかし月10万でも 教育、住居、医療などを現物で手当てすれば、暮らしていける。現物支給とベーシックインカムを組み合わせて保障する必要がある。ベーシックインカムだけでは解決しない。

・ ベーシックインカムという場合、グローバルに考えたときにどうするか。中国人労働者はどうするのか。

・ 日本で暮らしている人には、外国人にも同じように保障する。

・ それは外国人の入国規制の強化という危険を伴う。

・ 生存権を核にして、どう具体化するかは難しい問題。日本住民だけの問題でもない。

・ 国家の機能の問題になる。国家がやる場合、世界的な所得再分配とどう結び付けるか。これを同時に考えるのは無理。日本でいえば、所得保障というより、所得控除などの形でやっているから、それらをベーシックインカムに置き換えれば財源がそれほど膨大になるとはいえない。一番の問題は生活保護。この仕組みをどう別の形に変えるか。

◎民衆のつながりを作っていくプロセス

・ プロセスの観点を入れたいものとして、沖縄やアイヌなどの少数民族の問題や、ジェンダーの問題などがある。民衆自身の関係をどう作っていくのか。生存権を守るために共闘関係をどうつくるか。国境を超えた関係をどうつくるか。短期的には難しいが中期的には考えたい。

・ 日本の国内の労働は中国の状況の反映がある。共闘関係はすでに少しずつできあがりつつあるのではないか。

◎国家のガバナンス機能

・ 国家がやるべきこと、やる必要がないこと、やれないこと、の3つに分けて考える。公共サービスは必要。国境を超えた移動については、ものとマネーについては規制する、人については規制しない。人が自立し、自給できる地域が横につながることが目標。 

・ 資本主義と国民国家が対応している。主権国家が独占している権利をどうばらしていくか、というふうに問題を立てたらいい。

・ 国家の最大の歴史的機能は国境で寸断すること。人を規制はしていないにしても、食べていけないから規制されていることと同じ。食べていけるだけの条件が整えられることが必要。

・ 中央政府と地方政府を区別した方がいい。地方税でやって、地方間で調整する。
 社会的自治の能力を高めてアイデンティティの問題、構造の問題を下から乗り越えていく。それでもなおかつ国家は自己主張する。下からの力が国家の状況をしばってしまう、社会が国家に先んじて秩序をつくってしまう。

・ EUは4段階のルールがある。一番強い指令は、各国が従わなくてはならない。EUが果たしている政府の機能、裁判所、議会 議員は各国から選ばれる。国民の意思をどう反映させるかを考えたときの仕組みとして参考になるのでは。

・ 国家の機能をばらしていくプロセスでEUを考える必要はある。

・ ヨーロッパ合衆国の形成過程。全体としては国民国家ではない、他国民国家。

・ ボトムアップ的な政府は必要不可欠。ただ国境を寸断するような国家は解体すべき。国家と政府を分けて議論しないとダメ。ガバナンス機能は必要。

・ 渡辺治「新福祉国家論」とどう違うか。国家によるパターナリズムがひじょうに強い。中央集権管理を強めた問題にたいして無頓着。グローバルな関係については何もいっていない。経済成長については否定しない。内需拡大。

・ 企業から税金をとらなければ。

◎原則のなかで足りないものは。対立している原則はないか。

・ 都市と農村の問題。大野さんの意見を聞きたい。もうひとつは戦後補償など歴史的な問題。

・ 民主主義の論理。デモクラシーに何が必要か。民衆が自己決定していくシステムを考える必要。立憲主義概念でいいのかという問題。

・ 立憲主義は国家主権が前提になっている。

・ 憲法と裁判所は必要だろう。
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