メニュー  >  ながさわセンセイの高校白書(35)   長澤淑夫
 今年4月入学の生徒から高校も新学習指導要領に基づくカリキュラムに移行しました。社会科では、歴史総合(基本的に18世紀以降の日本史と世界史を混ぜたもの)と公共、地理総合が2単位で必修となり、その履修後、次年度以降で従来の世界史B(通史)にあたる世界史研究などを選択で学ぶという組立てです。つまり同じ年度では履修できない「しばり」がかかっています。内容はともかくこの「しばり」のおかげで例えば一人の授業担当者が同じクラスを5時間教え(例えば歴史総合2時間プラス世界史研究3時間)、内容的に融通を利かし、自在に歴史を教えることはできないのです。理科なども同様な仕組みでとにかく週2回の授業が一年生でやたらと増えたのです。現在の勤務校では二単位科目は中間テストをしないので、期末テスト時に沢山のテストを一年生が受けるようになってしまいました。週2回ホントにあるわけではなく休日、行事や健康診断などで授業は減るので実数は年70時間の四分の三程度になります。新指導要領では、討論の導入や図書館の活用、生徒の発表などますます主体的活動を求めています。「主題や問いで構成される授業」と文科省は表現しています。しかしこの時間では難しいでしょう。「しばり」からの解放が必要です。また40人学級から30人程度に学級定員を減らす必要もあります。いわゆる先進国では25人程度です。
 評価方法も大きく変わりました。私は旧カリキュラムの2年を担当しているため、この方法をまだ高校では経験していません。「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学ぼうとする態度」の3観点について、それぞれABCで評価します。テスト問題は「知識・技能」をみる出題とか「思考・判断・表現」を評価するための問題と明示します。めんどうくさいですね。その問題構成の割合は決まっていません。さらにこの最初の2観点は授業時の小テストやレポート、発表等でも評価します。「主体的に」はまあ総合的な判断となります。そして学期の終わりに配られる通知表には数値はなく、ABCだけになります。年度の終わりには評定として5段階評価も明示されます。ここでは予め決められたABCの組合せ表に従い、BBBは3とか、AACなら4、AAAは5となり、その数値は生徒に示され、指導要録に記載され、就職や大学受験等の内申書に載ります。しかしこの年度末処理の細かい点は未定です。以前は学校それぞれに10点法や100点法で生徒に通知していた評価ですが、今回からは、たとえば、キミの「思考・判断・表現」はC、などと告げられ、それで生徒のやる気がでるものやら、なんとも変なことになったものです。
 指導要領は「主体的・対話的で深い学び」・「見方・考え方を働かせること」「資料」から情報を読み取る、など良いことを言ってはいますが、1クラス40人のままで、図書予算も減り続け、教員が勉強する時間や図書も確保されない現状のままで、教員の努力だけでは成果は上がらないかもしれません。観点別評価の押しつけは、そもそも評価とは何かという大問題を提起した点は評価できますが、この点を堀下げた議論がわれわれの側でも必要でしょう。10年に一度改訂される指導要領は教科・科目の目標だけを定め、実施方法は各教員にまかせてもらいたい。現場の状況を踏まえ自発的に創意工夫ができることこそ教育のおもしろさなのですから。またいつものことながら、教員や生徒・保護者、組合と「対話」してこうした施策を変更するつもりは文科省にはないのです。

プリンタ用画面