『季刊ピープルズ・プラン』50号(2010年春号)

OPEN報告
第4回 労働と教育――「働くのが怖い」とは


 私は、若年層の就職へのつながりを中心に雇用政策を研究しており、労働と教育は関連領域であり非常に興味があるので今回のオルタキャンパスに参加した。

 まず全国コミュニティ・ユニオン連合会会長の鴨桃代さんから、非正規労働者の現状と課題について報告があった。賃金は最低賃金に近づきつつあり、それは生活保護水準以下である。月収20万円、これは東京都の最低生活保障額であるが、この額を超える者の割合は正社員では89.8%あるのに対し、非正社員では21.5%しかない。いま、すべての雇用環境が劣化しており、管理職のなかには賃金半減の話もある。

 派遣労働に関しては法的規制が骨抜きで、政権交代後も相変わらずである。労働政策審議会の委員は麻生政権時のままであり、大企業内労組に所属する労働者委員はディーセントワークに関する社会的運動に手をつけていない。ユニオンのメンバーは入れ替わりはあるものの人数は減っていない。

 次に小倉利丸さん(ピープルズ・プラン研究所)から、地方の若者とメンタルヘルス、労働運動に関する報告があった。地方では、ファーストフードは比較的高い時給であり、都市部にある問題とはかけ離れている感がある。高卒以下の者は労働組合というものを知らず、中には会社の回し者とも見ている者もいる。

 メンタルヘルスは高度成長期には問題なかったが、1990年代の成果主義、コミュニケーション能力重視の中で問題になったのではないか。しかし一方で生きがい・やりがいがある仕事とはいっても、中には社会的に後ろ指をさされる仕事もある。

 サービス労働や営業など、会社のブランドを後ろ盾にしている仕事をする者には、労働運動とは相容れない階級的ジレンマもある。また、団塊世代のたたかう文化の伝承が途切れたことも問題としていた。

 現在の労働問題に関する非常に良質なエッセンスがこの会で得ることができ、メンタルヘルスについていい手がかりが見つけられて有意義であった。教育について議論が出来なかったのが残念であるが、これは今後改めて議論の機会がほしい。
(竹島宗和)

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