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[People's Plan 45号・研究会プロジェクト報告]
戦後研究会

松井隆志

 戦後研は昨年から第三世界主義のテーマに入ったが、ここ数回はその中でも中国の文化大革命の問題(日本における文革評価)を取り上げた。その流れを受けて、11月の研究会では加々美光行『鏡の中の日本と中国ー中国学とコ・ビヘイビオリズムの視座』(日本評論社・2007年)を読んだ。
 『鏡の中の日本と中国』は2つの論文から成る。前半は、日本の中国研究の歴史を批判的に整理し、結論として主体の相互関係を前提とした「コ・ビヘイビオリズム」の視座を提唱。一方後半は竹内好の中国論と実際の中国との関係を踏まえた竹内好論となっている。研究会の議論では、前半の論文については啓蒙的でわかりやすいという意見の一方で、この「コ・ビヘイビオリズム」の有効性について異論も出された。また後半の竹内好論については、その評価をさらに深く検討しようということで、続けて竹内好と「近代の超克」について取り上げることとなった。
 そういうわけで12月は、子安宣邦『「近代の超克」とは何か』(青土社・2008年)を読んだ。この本は、「東亜協同体」論と「世界史の哲学」の差異を明らかにするなど「近代の超克」論の批判的啓蒙書としてもわかりやすい。しかし本書の主役は実は竹内好である。「近代の超克」論に対してある種の可能性を見出そうとする竹内の主張に対して、その議論の土台自体が侵略・膨張主義の枠内でしかないことを明らかにしている。つまり本書は竹内批判となっている。にもかかわらず、竹内の「方法としてのアジア」を結論部分で救済している。「実体」でなく「方法」だというが、「アジア」という以上「実体」に横滑りするのは避けられない。子安によるこの竹内救済は変ではないか。そうした議論が出された。
 このように、第三世界主義→文革問題→中国評価→竹内好とテーマが流れてきた。次回2月4日は加々美光行・鶴見俊輔編『無根のナショナリズムを超えてー竹内好を再考する』(日本評論社)を取り上げる。もちろん、これまでのテーマの延長線上にある以上、それらの論点についても引き続き議論になるが、個人的には最近耳にする「良いナショナリズム」論の批判的検討ができれば、とも考えている。
 なお、3月以降のテーマや本は未定。少しでも興味関心にひっかかるものがあれば、気軽に参加してください。日程等問い合わせは事務局まで。
(まつい たかし)
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