People's Plan 42号
憲法研究会

 憲法研究会は、共産党の「中立自衛論」をひきつづきテーマとしている。三月の研究会では、一九六一年に採択された日本共産党綱領やその草案に関する宮本顕治報告、それに関連して、一九六〇年前後に不破哲三や上田耕一郎が書いた各種の憲法論や中立論に関する文章を読んだ。綱領と宮本報告は、日米関係を支配従属関係として捉えている。また、革命が起きた場合、自衛隊に代わって革命政権の軍隊を作ることになるかどうかについては、何も言っていない。

 次に、不破の議論は、マルクス主義者の立場からはじめて、憲法九条の非武装国家の理念を社会変革の目標として位置づけたものである。他方で、革命後には自衛軍創設という発想も示唆されていること、非武装国家の安全をソ連・中国の軍事力に依存したアジア集団安保体制によって担保しようとしていることなど、非武装の観点からは大きな限界もみられた。

 四月には、これに関連して、憲法学者・長谷川正安の『国家の自衛権と国民の自衛権』(一九七〇年)を検討した。長谷川の憲法論、というより「戦後日本国家論」は、平和憲法の体系と日米安保の体系が対等のものとして矛盾しながらも併存しているとの見方を基本とする。また、先の共産党綱領と同じく、日米安保を押し付けられることによって日本は米国に対する従属状態にあり、日本にとっての焦眉の課題は民族的独立を達成することにあると長谷川は論じている。さらに、民族的独立を達成したら次はとうぜん社会主義に進むことが想定されているが、これまで検討してきた共産党の場合と同じく、長谷川も、社会主義体制は本来的に対外侵略の原因を生み出すような体制ではないことを示唆している。

 テキストに関する討論では、長谷川が「民族的従属」という論理構成をとったために沖縄とヤマトを無自覚に同一視してしまっていること、またこれに関連して、長谷川は平和憲法と日米安保の矛盾を主張しているが、ヤマトにだけ平和憲法が適用され沖縄には日米安保の負担が押し付けられるという形で実態上は両者がうまく組み合わさっている点を無視していることなどが批判された。また、軍隊・基地の存在自体が侵略戦争の原因になるという視点が欠落している点にも疑問が出された。

 六月の憲法研では、名古屋イラク派兵訴訟の画期的な違憲判決を読みます。ふるってご参加を。
(山口)