[People's Plan 43号・研究会プロジェクト報告]
憲法研究会

 このところの憲法研究会は、名古屋高裁で四月に言い渡されたイラク派兵違憲判決について検討している。六月の研究会では、まず判決文そのものを読んでみた。原告らの訴えを門前払いにせず、イラクで起こっている事態に具体的に踏み込んでイラク派兵を違憲と断じた点、「平和的生存権」に具体的権利性があると認めた点で画期であるとの好評価が当然出てきた。とても裁判の判決文とは思えない(暖かみのある)文体だとの意見も。他方では、イラク特措法の存在自体は合憲としたこと、平和的生存権の具体的権利性を認めながらも、本件については権利侵害を認容しなかった点については、不満の声が出た。なお、研究会では奥平康弘による統治行為論についての論文もあわせて読んだ。
 七月の研究会では、この奥平による名古屋判決評価の論文を素材にした(『世界』〇八年七月・八月号)。奥平は、判決が平和的生存権の裁判規範性を認めた部分に私たちと同じく着目しつつも、判決は平和的生存権の具体性について十分に論証しえていないのではないか、そのために原告らの権利侵害を否認せざるをえなかったのではないか、と論じている。
 この論文を読んだ参加者からは、奥平は、イラク派兵のようなケースにおいて、平和的生存権をどう具体的に肉付けしていくか法律家として何らかの示唆をすべきだったのではないか、との批判が聞かれた。奥平の論文を読んでも、何となくはぐらかされた印象を受ける。「ミサイルを撃ち込まれる」とか「兵隊にとられる」といった場合なら、平和的生存権侵害を主張することはたやすいだろう。しかし、イラク派兵のように加害者側に私たちが回っている場合、どうやって権利侵害を論証するのか。そのいちばん知りたい部分が書かれていない。八月の研究会では、原告らの準備書面などを読みながら、この問題について考えてみたい。
(山口響)