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[『季刊ピープルズ・プラン』46号・研究会/プロジェクト報告]
戦後研究会

 二〇〇九年初回の戦後研は、前回の竹内好評価の続きとして、二月に加々美光行・鶴見俊輔編『無根のナショナリズムを超えて−−竹内好を再考する』(日本評論社)を読んだ。

 本書はシンポジウムでの発言記録が主で、「再考」といっても論者ごとに主張は異なっている。研究会でもさまざまな指摘がなされた。とはいえあえて言えば、「方法としてのアジア」という竹内の概念が本書の中心的な争点になっているのではないか。松本健一のようにこれを単純なアジア主義と重ねるのは論外としても、タイトルにあるような「無根」ではない「有根のナショナリズム」に希望を見出す鶴見俊輔の解釈も問題だろう。こうした議論を導いてしまう竹内好の思想と批判的に向き合うべきだと筆者(松井)は思っている。

 三月は再び第三世界主義の問題に戻り、その源泉の一人であるフランツ・ファノンについて取り上げた。本としては海老坂武『フランツ・ファノン』(講談社、現在はみすず書房から復刊)を読んだ。本書はファノンの軌跡と思想についての優れた紹介であり、昨今の「現代思想」的ファノン像よりよほど学ぶところが多いとの声もあった。それと同時に、著者・海老坂自身の思想的転換をも示しており、近年復刊されたみすず書房版最終章では暴力に対する著者の立場(批判)はより明確になっている。

 四月は、文革問題との関連で小田実『毛沢東』(岩波書店)を読んだ。今から読むと、エドガー・スノーなどに影響された当時の「標準的」な毛沢東像となっており、独自の視点に乏しいのではないかという感想が出た。それ以上に、党や軍、戦争に対する批判的視点が弱いように感じられた。

 今後の予定としては、小田実のつながりで五月に小中陽太郎『市民たちの青春−−小田実と歩いた世界』(講談社)をとりあげる。それ以降は未定だが、この辺り(文革、第三世界主義、六〇〜七〇年代……)のテーマがしばらく続くと思われる。もちろんそれ以外の企画提案も含め、参加者は随時募集中。

 なお前記通常の研究会のほかに、三月一四日には戦後研究会主催の集会「プロレタリア文学とこの時代」を開催した。このタイトルは当然『プロレタリア文学とその時代』を念頭においたものであり、その著者である栗原幸夫さんからの発言と、池田浩士さんと彦坂諦さんからの応答、そして会場を含めた議論があった。残念ながら内容を報告する紙幅はないが、集会記録は活字化すべく準備中につき乞御期待。
(松井隆志)
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