2019-8-8 0:33:10
PP研からのお知らせ : 安倍政権の勝利。野党の善戦、左派ポピュリズム――参院選

■自公の勝利、野党の善戦
7月21日の参院選は、有権者の半数以上が棄権する惨状に終わった(投票率48.80%で、前回16年から6%近く低下)。この政治的シラケのなかで、自民党は57(改選議席から10減)、公明党は14(3増)、合わせて71議席と、改選過半数を8上回る議席を得た。自公に維新10(3増、希望1を含めると2増)を加えた改憲勢力は81で、非改選を合わせて160議席と、改憲発議に必要な3分の2(164)を割った。
 野党は、立憲17(8増)、国民6(2減)、共産7(1減)、社民1(増減ゼロ)、野党系無所属9(6増)、れいわ新選組2(2増)であった。立憲は倍増だったが、国民と合わせた23議席は、前回の民進党32からは9減。ただし、野党系無所属が前回より5増なので、4減であった。野党は合計で42議席を獲得したが(12増)、前回よりは2減。逆に自公維は81(5減)で、前回より4増となった。
 比例区の得票は、自民1771万票(前回より240万減)、公明654万票(103万減)、維新491万票(24万減)と減らしたが、得票率は自公がほぼ変わらず、維新が0.6%アップだった。野党は、立憲792万票、国民348万票で、合わせると前回の民進より35万の減少にとどまったが(得票率は合わせて22.8%と、1.8%アップ)、立憲は17年総選挙の比例1108万票からは316万票も減らした。共産448万票(154万減)、社民105万票(48万減)と、得票も得票率も減らしている。対照的に、れいわは、投票者総数が642万も減るなかで、228万票、得票率4.6%を獲得した。
 第1に、自民党は高い内閣支持率に支えられて、議席と得票数の減少を最小限にとどめ、大都市で低投票率もあって強さを保った公明党と組んで、政権の安定的維持に成功した。
 第2に、改憲3分の2をめぐる攻防では、改憲勢力の狙いを阻むことができた。ただし、その差はわずか4議席で、補選や寝返りによって失われる可能性がある。3分の2に近接したのには、維新が大阪・兵庫に次いで東京と神奈川で進出したことが大きい。大都市を中心に新自由主義(「身を切る改革」)に共鳴する強固な層の存在を見せつけた。
 第3に、改憲勢力による3分の2獲得を食い止めた意義は大きい。安倍は国民の切り崩しを公言し、改憲への野望をぎらつかせているが、改憲発議へのハードルはとりあえず高くなった。野党は、野党統一候補を擁立した1人区では10勝22敗(前回は11勝21敗、13年は2勝29敗)と、自民党の集中攻撃をはね返して善戦した。勝利したほとんどの1人区が僅差の勝利だった激戦ぶりが物語るように、野党共闘の力は引き続き発揮された。
 第4に、女性は28名が当選し、参院では56名と過去最多となった。

■なぜ、安倍政権を追いこめなかったのか
 にもかかわらず、私たちは、安倍政権に国政選挙での6連勝を許してしまった。欧米諸国の政治的変動と対称的に、例外的に異常な政治的安定が続く結果に終わった。40%前後の内閣支持率が40%前後で落ちないように、多数派の人びとの政治への期待は、「変化」(34%)よりも「安定」(60%)が上回っている(朝日7月3日)。つまり、現状がこれ以上悪くならないことを望んでいる。
 しかし、参院選の前には、安倍政権を脅かしかねない材料があった。1つは、消費税の10%への引き上げである。これへの反対(52%)は、賛成(42%)を上回っていた(朝日7月15日)。消費増税を公約した政権は、過去いずれも敗北し退陣に追い込まれた。もう1つは、年金だけでは生活できず「老後2000万円が必要」という問題の浮上である。これについても、「老後の不安に対する安倍政権の取り組み」を評価しない人がずっと多かった(62%、評価するは22%、同)。
 野党は、立憲主義といったテーマではなく、生活の場から政権を批判する論戦を仕掛け、消費増税の中止、安心できる年金制度(マクロ経済スライドの廃止や最低保障年金など)を訴えた。この争点設定は間違いではなかったが、野党の主張は、不安を抱える多くの人びとの気持ちを動かすことができなかった。
 社会保障の財源として消費増税はやむなしと考える人が少なくない、逆に年金制度を信頼できず「自助」に頼るしかないと思う人が多い(62%、日経7月1日)といったことも、その要因である。しかし、野党の最大の弱点は、当面の短期的な政策をめぐる議論、例えば消費増税は消費を冷やし景気を悪くするといったレベルに終始したことにある。人口減少と低成長が避けられない時代にふさわしい長期的な社会ビジョンを大胆に打ちだせない。いいかえると、経済成長にすべてを託し「我が亡き後に洪水は来たれ」というアベノミクスの根本的な弱点に切りこめていないのだ。

■左派ポピュリズムの登場
 旋風を巻き起こしたのは、れいわであった。消費税は廃止、奨学金はチャラといった主張のシンプルさ、生産性優先と自己責任の社会の拒否の訴えの迫力もあったが、何よりもその政治スタイルが斬新で既成政党のそれを見事に打ち破った。ALS患者や重度障害者の候補を特定枠に推す、山本太郎が広場で聴衆に対話を呼びかける、SNSを駆使する、4億円の寄付を集める。れいわは、これまで政治に縁遠かった人びと、とくに野党に失望していた人びとの心を掴んだ。20〜40代の無党派の1割以上の支持を集め、初挑戦で得票率4.6%、得票228万票と大躍進した。
 もちろん、消費税を廃止すれば個人消費が喚起され景気が回復して税収も増える、その間は国債発行に頼るという政策主張は、ズブズブの経済成長主義であり、目先のことしか想定していない。
 れいわは、こうした政策の粗悪さも含めて、日本における左派ポピュリズムの登場を告げた。それは、政治を動かせるという希望を少なくない人びとに与えた。この流れが次の総選挙でどこまで大きくなるかの予測は難しい。しかし、野党も私たちも、この左派ポピュリズムにどう向き合うかが、問われる。
                               
白川真澄(PP研)[2019年7月23日記、「反改憲通信」2019年7月31日、一部修正]

投稿者:事務局
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