メニュー  >  敗戦70年を越えて:安倍極右政権を倒すとは何を意味するか、その先に何が開けるのか――国家の正統化原理の角度からの考察/武藤一羊

敗戦70年を越えて:安倍極右政権を倒すとは何を意味するか、その先に何が開けるのか――国家の正統化原理の角度からの考察


武藤一羊
(PP研運営委員)
2015年8月1日記


安倍政権との闘いの位相


 安倍政権が憲法破壊クーデターと呼ぶべき非合法な国家乗っ取りを遂行中であることが社会全体に見抜かれつつある。権力を一身に集中した安倍晋三は、日本国を、戦争のできる、いや戦争参加のチャンスに進んで飛びつける国家に変態させるための法律、制度、政策の改変を、異様なテンポで、憑かれたように、進めている。

 一体、この性急な強行突破の企ては何なのであろうか。その性格は、動因は何なのか。私たちは、安倍の施策・行動に対決し、押し戻し、つぶし、政権を倒さなければならないが、そのプロセスの中で、あらためて、彼らの企て全体が持つ意味を見切る必要が切実になっている。見切ることを通じて、その全体を何をもって葬るかの道が視野に入ってくるからだ。同時にそれを葬るとは何を意味するか、それを通じて何を追求し、創り出すのか、が大きく決まってくる。

 この事業は、日本の過去と現在にがっちり組み合うものであるが、同時に外部に開かれたプロセスである。二一世紀に入って世界全体が荒廃と無秩序と暴力化に見舞われている。国民国家制度は随所で流砂化し、米国覇権がゆらぎ、ロシア、中国など旧帝国再建の企てが露骨化している一方、人間と環境の破壊以外に蓄積を継続しえなくなっているグローバル資本の支配の下、途方もない富と権力の集中と他方における貧困と剥奪の拡大、深化が加速している。この状況は、富と権力を独占する一%に抵抗する九九%の民衆という意識と横につながる運動を生み出すとともに、その「北」の多くの国で排外主義的極右の力を強めている。連鎖するそれらすべてに絶望した人々、とくに若者が、既成秩序の崩壊のなか、宗教的旗印を掲げ、国境を越えてつながり、武装し、破壊と恐怖によるディストピアを形成する動きが広がっている。

 そのなかでどのような別の自治的秩序を民衆が下から創造し、定着させていくのか。それは資本の支配を挫き、押しのけ、無化しつつ、国民国家を越えた自治の秩序を生み出す横に連合していく民衆の動きであるだろう。そこへの道はまだ見えていない。戦争と革命の時代と呼ばれた二〇世紀には、二度の世界戦争を経て、共産主義・社会主義の思想と運動が、一連の革命をつうじて、国家権力を握り、資本主義・帝国主義と対抗する主導的存在としての社会主義陣営を形成し、その力関係のなかで民族解放運動が一斉に興隆し、新興独立国家が続々と誕生した。社会主義陣営は、世紀の後半、冷戦のなかで世界情勢の相貌を決定する力として存在した。しかしこの運動は重大な本来的欠陥と資本主義の重圧のもとに、一九九〇年代、挫折し、崩壊し、二一世紀、世界は資本主義の一元的支配に戻った。しかしこの資本主義は、地球上の人類社会を維持する能力を失った――いや人類の自己崩壊を招く蓋然性の高い――未来なきシステムであることを実証しつつあり、資本主義を乗り越える必要はますます切実になっている。そのためのグローバルな運動を私は反資本主義運動の第二波と位置付ける。あえて第二波とするのは、二〇世紀の経験を第一波と置くことで、そこに歴史的な継承性を見るとともに、第一波の挫折の厳しい総括要求を自己に課することになるからである。

 大風呂敷はここまでとしよう。だがいま私たちが日本列島で展開している運動が孤立したものでなく、下からのグローバルな多数者の活動世界に接続し、交流し、影響し合い、その中でそこに合流する性格のものであることを確認しておくことは必要である。安倍政権といういわば世界史的な小者に振り回されているのが、日本における今日の局面であるが、その局面を歴史的にも地理的にも、このもっと長く、もっと広い場に置きなおして見る、そしてその場に働く下からの力とのつながりのなかで決着をつける、そのような展望に、私は楽観主義の根拠を位置づける。

★第一次アップロード(8月10日)
 以下のURLよりアクセスしてください。
 →http://bit.ly/1grP4rb

★第二次アップロード(8月17日)

※本論説の続きについては、順次アップロードしていく予定です。
※次回アップロードは、8月26日(水)を予定しています。
※著者により一部修正(8月4日)
※なお、本論説は、武藤さんが準備中の論文集の書下ろし原稿の一部になります(8月8日追記)。
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