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【本稿は、7月27日のPP研ラウンドテーブルでの報告を文章化したものです】

参院選・対抗勢力・安倍政権
白川真澄
 

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各政党の比例区の得票数と得票率(カッコ内は2010年参院選との比較)
         得票数                      得票率
 自民党    1846万0404票(プラス438万8733)  34.68%(10.61%アップ)
 公明党     756万8080票(マイナス7万1352)  14.22%( 1.15%アップ)
 民主党     714万4215票(マイナス1130万5925) 13.40%(18.16%ダウン)
 維新の会    635万5299票            11.9%
(12月の総選挙での比例代表での得票は1262万2228、得票率20.4%)
 みんなの党   475万5160票(マイナス318万8490)  8.9%(4.7%ダウン)
 共産党     515万4055票(プラス159万0498)   9.68%(3.58%アップ)
 社民党     125万5235票(マイナス98万7501)  2.36%(1.4%ダウン)
 みどりの風   43万0673票            0.81%
 緑の党     45万7862票            0.86%

自民党圧勝の要因

 7月の参院選で自民党が圧勝し、安倍首相は安定した権力を手に入れた。

 自民党は、改選議席(121)のうち65議席を獲得し、公明の11議席と合わせて76議席を占めた。この結果、非改選を合わせた議席は135と、過半数をはるかに超えて安定多数を握ることになった。
 
 参院選の焦点の1つは、改憲推進勢力が3分の2を占めるか否かにあった。自・公両党に、みんなの党8プラス維新8の16議席、非改選を合わせて27議席を加えると162議席となり、ちょうど改憲発議に必要な3分の2に達した。しかし、公明党が改憲に慎重な姿勢を示しているなかで、自民・みんな・維新の改憲推進3党の獲得議席は81議席、非改選(「改革」1を含む)を合わせて143議席にとどまった。これに民主党内改憲推進派の11(共同通信調べ)を加えても154議席で、3分の2には届かなかった。衆院では改憲推進3党だけで366議席と3分の2(320)を越えている。その意味で、参院でも改憲推進3党で3分の2を握って公明党を締め上げ、一気呵成に改憲発議に進むという目論みは、さしあたり崩れたと言える。

 しかし、自民党は、得票数も得票率も大幅に増やすことに成功した。比例区では1846万票、得票率34.7%と、いずれも3年前の参院選よりも439万票、得票率を10.61%増やした。選挙区でも2268万票、得票率42・7%と、前回を319万票上回り、得票率を9.4%アップさせた。全体の投票率が52.61%と、5.3%低下したことを考えると、圧勝である。これは、得票数を減らしながら(比例区で219万票、小選挙区で166万票)議席を一挙に増やした昨年末の総選挙での勝利との大きな違いである。総選挙では民主党政権への不信任が自民党を勝たせたが、今回は自民党への支持が回復したのである。

 その最大の要因は、アベノミクスによる景気回復への期待である。朝日新聞の出口調査では、アベノミクスを評価する69%、評価しない24%、評価する人の47%が自民に投票したと答えている。評価するは、若い世代になるほど高く77%である。投票日直近の朝日新聞の世論調査では、アベノミクスに期待できる40%、期待できない36%であったが、やはり「期待できる」は年代が若くなるほど高くなっている(朝日7月18日)。

 アベノミクスへの評価は、奇妙にねじれている。多数の人びとは、アベノミクスによる景気回復への実感はない、つまりそれが雇用や賃金の改善に結びついていないと感じているが、「期待できる」としている。6月末の朝日新聞の調査では、アベノミクスを評価する50%、評価しない31%だが、「賃金や雇用が増えること」に結びつくと思う32%、思わない48%となっている(朝日7月1日)。

 アベノミクスの秘密は、「期待」である。インフレへの「期待」=予測が生まれて初めて、企業の設備投資や個人の消費行動が活発になり、デフレから脱却できる、というわけである。期待=予測に働きかけて経済を活性化するというアベノミクスの魔法は、政治の場面でも効果を発揮した。閉塞状況のなかで、実感はないが「期待」したいという心情が多くの人びとを動かした。

 また、政権の安定化(「ねじれの解消」、「決められる政治」)への期待も、自民党支持を押し上げた要因の一つである。朝日新聞の7月22〜23日の調査では、「ねじれ」解消が「よかった」と思う53%に対して、「よくなかった」24%となっている。

 野党(共産党を除く)が安倍政権に対する明確な対抗軸を示せなかったことも、自民党支持への回帰を招いた。民主党は下野したにもかかわらず、リベラル勢力としての位置を定められず、ますます衰退した。総選挙では2000万票を失ったが、今回の選挙でも3年前と比べて1131万票を失って(比例区)惨敗した。維新は改憲推進、みんなはアベノミクス(成長戦略)推進の立場をとって安倍政権の路線を支持し、その補完役を演じただけであった。その結果、維新とみんなは議席を増やしたとはいえ(プラス6議席と5議席)、伸び悩んだ。比例区の得票数では、維新は、総選挙の比例代表での得票数の約半分(636万票)に終わり、みんなは3年前よりも319万票減らした。

 自民の圧勝と民主の没落、つまり二大政党システムの瓦解という光景は、昨年末の総選挙の構図の繰り返しであるが、重要な変化もあった。

大都市での対抗勢力の出現

 自民党の圧勝の対極で、大都市では対抗勢力が明確に出現した。

 まず、共産党が東京、大阪、京都の選挙区で新しく議席を獲得し、神奈川で大善戦した。比例区でも5議席を獲得した(プラス2議席)。得票数も、比例区で159万票、選挙区で139万票増やし、長く続いてきた低落傾向から支持を挽回した。

 共産党が、安倍政権に対する批判や不信の受け皿になったことは明らかである。出口調査では、アベノミクスを評価しない人の24%が共産党に投票したと答えている(民主へは23%)。東京の吉良、大阪の辰巳といった若い候補者は、従来の共産党候補のイメージを覆し、若者の雇用劣化に対する批判を人格的に象徴することに成功した。
もう1つは、東京選挙区で山本太郎(無所属)が脱原発を鮮明に掲げて勝利したことである。山本は66万6684票を獲得し、得票率11.9%で自民党候補を上回る4位で当選した。山本の獲得した票数と得票率は、2007年に川田龍平(無所属)の得た68万4000票、11.3%とほとんど変わらない。

 東京選挙区に限っていえば、自民(2)・公明VS共産・山本という二極対立が出現したのである。そこでは、民主、みんな、維新といった中間的あるいは右翼的な勢力が議席を取れず、姿を消した。

 原発問題が争点から消された参院選で、脱原発を主張した2人、とくに山本が勝利した意味はひじょうに大きい。山本は、脱原発と同時に無党派層の既成政党不信を政治的に表現する役割を担った。無党派層が多く、定員5名(かつては4名)という独特な構造をもつ東京選挙区では、既成政党に失望している人びとの独自の政治表現が可能であることが、あらためて確証された。

 また、沖縄では米軍基地撤去を主張する候補が勝利した。糸数(社会大衆党)は29万4420票を獲得し、自民候補の26万1392票を3万票以上も上回った。安倍が沖縄を訪問するなど政権側の攻勢に抗して勝利したことは、沖縄の人びとの強い意思を表わしている。

 共産党が安倍政権に対抗する勢力の中心として伸びた反面、脱原発・反TPP・反改憲の他の対抗勢力はまったく振るわず、支持を減らした。これらの勢力は、改選前議席では参院で17議席(生活6、みどりの風4、社民2、共産3、大地1、社大党1)を持っていたが、11にまで減った(共産8、社民1、社大1、山本1、生活0、みどり0、大地0)。 

 社民党は、比例区で3年前より99万票減らし、得票率も1.4%ダウンし、1議席を確保するのがやっとであった。衰退傾向に歯止めをかけられず、福島党首の辞任もあって、存亡の瀬戸際に追い込まれた。みどりの風は消滅必至、生活は極少勢力にと、共産党以外の勢力は散り散りばらばらになっている。

緑の党の敗北と三宅洋平のムーブメント

 私自身が積極的に関わった緑の党について触れておきたい。緑の党は、3・11の衝撃を受けた日本社会の変化を政治的に表現しようと、国政での初議席獲得をめざした。しかし、結果は45万7862票、得票率0.86%と、目標の1議席獲得、得票率2%はおろか、最低目標としての50万票、1%にも届かなかった惨敗であった。

 共産党や山本太郎とは対照的に、緑の党は、なぜ、安倍政権に対する批判・不安・不信の政治的表現=受け皿になりえなかったのか。

 緑の党が支持を期待して働きかけた人びとは、(1)「緑」的な人びと、すなわちエコロジーや脱経済成長主義に共感し、スロー・スモール・シンプルな生き方を実践している人びと、(2)脱原発、とくに原発即時ゼロを強く求めている人びと、(3)既成政党への不信をもち、新しい型の政治・政党を望んでいる人びと、であった。

 「緑」的な人びとの支持の獲得という点では、緑の党とみどりの風を合わせると、88万8535票であった。これは、2004年に「みどりの会議」が獲得した90万3770票とほぼ同じであった。エコロジーを掲げた政党に投票する人が90万人存在することは確証できたが、「緑」的な人びとは3.11以降拡大しているという予測からすれば、そうした人びとの支持を増やせなかった。

 また、緑の党とみどりの風を区別できず混同する人が多かったから、「緑」的な人びとの支持を緑の党に集め切れなかった(結果的には、両者を合わせても当選ラインに届かなかったが)。これは最初から危惧していたことであったが、だからといって両者が合流して選挙をたたかえばよかったということにはならない。緑の党も「みどりの連合」的なもの(統一名簿方式)を提案したが、みどりの風は政党要件をもつ自分たちへの合流を要求して譲らなかった。さらに、市民が自分の手で資金も候補者もつくる緑の党が、国会議員が決定権をもち選挙で負ければ消滅する政党と連携することには、新しい政治のあり方に背くと不信を招く惧れもあった。しかし、緑の党がこれからも国政選挙に挑戦し続けるとすれば、他の勢力や国会議員との広がりのある連合を探求し、イニシアティブを発揮することが問われるだろう。

 さらに、緑の党は、「緑」的な人びとの運動や組織(たとえば生協、有機農業、環境運動)と交流・対話・協力する活動ができていなかった。これは、脱原発など他の社会運動との関係にも言えることであった。

 脱原発をめざす人びととの関係でいえば、共産党からみんなの党までが脱原発を掲げるなかで、脱原発への要求を緑の党に引きつけることは、困難であった。脱原発運動のなかでのこれまでの実績を含めて、緑の党は、脱原発政党の1つにとどまった。

 緑の党は、新しい型の政治や政党を望む人びとに対して、議員中心ではなく「市民が立ち上げた政党」(参加民主主義、クオータ制)というアイデンティティを訴えた。その新鮮さやアマチュアリズムは、たしかに一定の共感を呼んだ。その反面、生まれたばかりの政党に対する社会的信用度の低さ(どういう人たちが作っている政党なのか分からない)が、大きなリスクになった。地方議員の数の少なさ(約70名)、社会運動(脱原発、反TPP、反貧困、助け合い、反改憲など)のなかでの信頼と認知の未熟さが、露呈された。

 知名度のない緑の党を苦しめたのは、マスメディアによる徹底した黙殺であった。国会議員がいないゆえにマスメディアでの発言機会を完全に奪われ、「諸派」としてしか報道されなかった。

 しかし、緑の党のなかで三宅洋平は、政治の新しい地平を切り開くことに成功した。三宅は、全国で選挙フェスを展開し、演説と音楽を融合させ、「政治は祭り」を実地に演出した。それは、緑の党が主張した参加型・対話型の政治を体現し、人びとの情動を動かした。その言葉はシンプルだが思想性があり、人びとの胸に響くものがあった。

 ネットを駆使した三宅は、またたく間に共感と支持を広げ、新しい伝説を創り出した。サイトの紹介者は最初の280人から88万人へ、三宅のツイート978はリツイート34021へと飛躍的に広がった。マスメディアによる黙殺の壁をものの見事に食い破り、17万6970人を投票に赴かせたのである。

 緑の党が三宅を推薦候補にしたことは成功だったが、党そのものが新しい政治を体現するものとしては社会的に認知されなかった。正直なところ、緑の党は三宅(の個人票)に救われたが、三宅の当選を支え切れなかった。しかし、三宅が試みたムーブメントから政治の新しい可能性を学び、導きだすことができる。

 緑の党は、初めての国政挑戦で惨敗した。だが、この敗北から、日本社会では緑の党が存立する基盤や可能性はない、と断定するのは間違いだろう。共産党だけが安倍政権に対する可視的な対抗勢力として登場しているが、山本太郎や三宅洋平の得票が示すように、共産党とは別の左翼・リベラル対抗勢力を期待・希求する多くの人びとが確実に存在する。

 たとえばアベノミクスとの対決において、共産党は、賃上げによる景気回復・経済成長を主張する。このケインズ主義的な対案が中短期的には有効であるとしても、アベノミクスの核心である経済成長至上主義に対抗するためには、脱成長のパラダイムに立つ経済や雇用のビジョンを打ち出す必要がある。この点で、緑の党はなくてはならない役割を果たすことができるはずだ。

安倍政権の行方――その弱点

 安倍政権は、衆参両院で一党支配を復活させ、数の上では圧倒的優位に立った。他方で、野党は無力化し、対抗勢力は極少数化している。こうして安倍政権は“やりたい放題”の政権になったが、しかし、そう簡単に思い通りにはならない障壁が待ち構えている。

 安倍政権は何よりも、景気回復の実現を最優先する方針を取るであろうし、アベノミクスの成否が政権の安定度を左右する。しかし、アベノミクスは、遅かれ早かれ破綻するリスクを抱えている。

 そもそもアベノミクスは、世界的な「緩和マネー」の動きに乗っかっている「期待」先行の投機である。米国の金融緩和縮小などによって緩和マネーが激変すれば、株価や為替レートや長期金利の乱高下が起こる可能性がいくらでもある。

 そして、株価の上昇が実体経済の改善、つまり雇用や賃金の改善につながる保証はない。デフレ脱却(物価の上昇)の兆しが現われ企業の収益が上向いても、そのことは労働者の賃金の上昇や正規雇用の拡大、また非正規雇用の労働者の均等待遇をもたらさないだろう。当面の最大の難関は、14年春の消費税率引き上げ問題である。消費税率引き上げによる個人消費の冷え込みか、税率引き上げ先送りによる財政危機の深刻化(長期金利の上昇による経済へのブレーキ)かというジレンマを抱え、政権内部でも対立が表面化するだろう。

 アベノミクスの次の目標は、「成長戦略」の実行と財政再建である。前者は、解雇規制の撤廃など雇用の流動化の促進、後者は社会保障支出の削減(介護サービスの切り捨てなど)がその内実である。いずれにしても、社会的な抵抗はかなり大きい。

 安倍政権は、アベノミクスを前面に押し出しながら、改憲への動きを本格化するという“二刀流”で進もうとしている。なかでも、9条改憲に向けて集団的自衛権行使の容認に踏み切る動きが慌ただしくなっている。法制局長官の首をすげ替えて容認派の人間を配置したが、安保法制懇を再開して年内に容認の提言を出させ、政府による憲法解釈を変更する、という筋書きである。

 その後は、国家安全保障基本法を成立させ(14年)、日米ガイドラインの再改定と関連法の改正というシナリオが浮上している。しかし、集団的自衛権行使の容認に対する反対論は、公明党も含めてそれなりに強い。安倍政権が正面突破しようとすれば、9条改憲に反対する声が高まるだろう。

 安倍政権の最大の弱点は歴史認識問題であり、それによって中国・韓国との関係改善が進まないことにある。

 中国と韓国は、自民党の圧勝を「右傾化」の進行の危機として受けとめているが、これを裏付けるように麻生の「ナチス」発言が飛び出した。政権側は麻生発言の撤回、今夏の首相の靖国参拝の見送りなど鎮静化に努めているが、中韓両国ばかりか米国も含めた海外諸国の不信感は増すばかりである。

 問題は、「従軍慰安婦」、「侵略」、「ナチス」といった発言をめぐる国内の反応と海外の危機感の間に、あまりにも大きな落差があることだ。呆れ驚き怒りをこめて外から日本を見る目に対して、国内では多くの人びとが鈍感である。運動の力と世論形成によってこの落差を埋めていくことができれば、安倍政権を立ち往生させ追い詰めることができる。

 原発再稼働と沖縄の辺野古基地新設は、安倍政権が強行しようとする課題である。だが、民意に反するものだけに、抵抗はひじょうに大きい。

 全国12基の原発再稼働の申請が出され、規制委員会での審査が始まったが、再稼働反対の世論はいぜんとして多数派である。朝日新聞の7月22〜23日の調査では、再稼働に「賛成」33%、「反対」52%である。そして、地元の住民の反対の声が強いなかで、地元自治体の承認を得るのは(自治体による違いがあるが)、そう簡単なことではない。そして、原発再稼働阻止、福島の被災者支援の運動は、安倍政権に対する最も強く広い抵抗・対抗線でありつづける。

 沖縄の辺野古基地新設をめぐる攻防は、知事が埋め立て申請に許可を出すかどうかが焦点になっている。来年1月の名護市長選挙は、その帰趨を左右する場となる。だが、オスプレイ配備反対の闘争の最中に米軍ヘリの墜落事故が起こるなど、日米両政府の思惑通り事態は進んでいない。

 安倍政権は、巨大な数を背景にした強大な政権に見える。しかし、多くの弱点やジレンマを抱えており、この弱点を突きジレンマを顕在化させる社会運動の再構築が問われる。議会内の対抗勢力がさらに少数になった現実を踏まえ、社会運動に課せられる役割はますます大きくなっている。そのためにも、脱原発、反TPP、沖縄、改憲阻止、歴史認識、反貧困などの運動が、分野を横断して討議し協力しあうことが求められている。
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