メニュー  >  エジプト人民の重要な勝利/ サミール・アミン(SAMIR AMIN)
【エジプトでの急速な事態の展開について、ARENAのラオ・キンチさん経由でエジプト出身の著名な経済学者、活動家サミール・アミンさんの短評が入りました。チュニジアから始まる北アフリカの下からの政治変革についてアミンさんは左翼の立場からこれまでも鋭い短評を寄せ、PP研のサイトでも紹介してきましたので、今回も急ぎ翻訳して紹介します。武藤一羊】

エジプト人民の重要な勝利

サミール・アミン


そうです。モルシ(大統領)とムスリム同胞団による統治の打倒はエジプト人民にとって重要な勝利です。すべてのエジプト人がそれを期待していました。2500万の市民がモルシの辞任を要求する請願に署名していたのです。そのモルシは、大規模な不正選挙でからくも勝てた人物で、エジプトの司法はその正統性を認めませんでした。「国際選挙監視団」は不正選挙を見逃したのです。

ムスリム同胞団はムバラクと同じ反動的政策、いや一般人民階級にとってはいっそう破壊的な政策を実行していました。同胞団は、民主主義のルールを尊重するつもりがないことを明らかにしていました。民衆運動を痛めつけるため暴力団を動員し、絶えず「内戦」の旗を振り回していました。モルシは残忍な独裁者として振舞い、国家のすべての要職に献身的な同胞団員を任命しました。むちゃくちゃな経済・社会政策と正常な国家運営の軽視があいまって、社会のかなりの部分が抱いていた幻想が急速にしぼんでいきました。ムスリム同胞団はその真の顔を晒したのです。それでも西側諸国は、この体制が民主主義に向かって進歩しつつあるとして、「選挙で選ばれた大統領」を支持し続けました。

6月30日に何が起こるかは予期されていました。2011年1月より大規模な大衆デモ。警察発表でも1600万人が街頭に出ました。モルシはふたたび「内戦」の旗を持ち出すことでそれにこたえました。だが日当を払っても50万人しか支持者を動員できませんでした。

西側諸国、イスラエル、湾岸諸国は、民主的で社会的に進歩的な独立エジプトが生まれる見通しを嫌悪しています。彼らは犯罪者から成る傭兵、いわゆるジハディスト(聖戦主義者)を操って仕掛けてくるでしょう。この傭兵軍は、これら諸国の共謀と支持によって、リビヤとエジプトのシナイ県で、設立されたものです。エジプト国民とその軍は彼らを敗北させることができるでしょう。

2013年7月3日記

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(参考)
【PPウェブ掲載】
 ◎リビアはチュニジアでもエジプトでもない 
   ――イスラム主義、地域主義、帝国主義、そしてソマリア化の可能性(2011年9月)

 ◎エジプト民衆の決起が「長い革命」の開始を告げる(2011年2月)
【『季刊ピープルズ・プラン』掲載】
 53号(2011年3月31日発行)
  ◎[巻頭論文]エジプト民衆の決起が「長い革命」の開始を告げる
   ――ムバラクを倒した4つの力(インタビュー付き)
 54号(2011年7月1日発行)【特集2 燃え上がるアラブ民衆革命】
  ◎2011年:アラブの春の到来か?
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AN IMPORTANT VICTORY OF THE EGYPTIAN PEOPLE

Yes, the fall of Morsi and of the rule of the Moslem Brothers is an important victory of the Egyptian people. It was expected by all Egyptians.
25 millions of citizens had signed a petition requiring the departure of Morsi, elected only thanks to a massive fraud;
whose legitimacy was not recognized by the Egyptian judiciary body, but who was imposed by the decision of Washington.
The body of “international observers of elections” had indeed failed to see the fraud!

The government of the Moslem Brothers was pursuing the same reactionary policy as that of Mubarak, and even in a more destructive way for the majority of popular classes.
It made clear that it did not intend to respect the rules of democracy;
it mobilized criminal gangs paid to harass the popular movements, continuously waving the flag of a “civil war”.

Morsi acted as a brutal dictator, setting in all positions in the State of exclusively devoted Moslem Brothers.
The combination of a disastrous economic and social policy and of the disrespect for normal management of the State led to an accelerated decline of earlier illusions of a good part of the society; the Moslem Brotherhood showed their real face. Yet the western powers continued to support the “elected President”, claiming that the regime was progressing toward democracy. Probably just as the Democratic Republic of Qatar is!

What happened on June 30 th was expected. Mass demonstrations, larger even than those of January 2011 :
16 million people on the streets, as recorded by the Police. Morsi responded by moving again the flag of the “civil war”.
But he was unable to mobilise more than a few hundred thousands of paid supporters.

Western powers, Israel and the Gulf countries hate the perspective of a democratic, socially progressive, independent Egypt.
They will manipulate criminal mercenaries, so called Jihadists, established with their complicity and support in Lybia and in the Egyptian province of Sina. The Egyptian nation and its army can defeat them.

SAMIR AMIN, July 3rd 2013
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コメント一覧

高林敏之   投稿日時 2013-7-10 11:33
 イスラエル有力紙ハーレツの報道によれば、対エジプト軍事援助を停止しないよう、イスラエル首相・閣僚らが米政府に働きかけているという。軍事援助停止はイスラエルの安全保障に否定的な影響を与えかねず、とりわけシナイ半島における治安がさらに悪化する可能性ありと警告。軍事援助停止はイスラエルとエジプトの平和条約を損ないかねない、とも。クーデタとモルシー政権の追放には満足の意を表明しつつ、可能な限り早期の民政復帰の必要性で米側と同意とのこと。
http://www.haaretz.com/news/diplomacy-defense/israel-urged-u-s-not-to-halt-aid-to-egypt-says-top-american-official.premium-1.534651

 モルシー政権は対イスラエル関係に慎重な姿勢をとってはいたが、ガザを支配するハマースと深い関係を持ち、イランとの関係を正常化したムスリム同胞団系政権よりも、35年以上も深い関係を築いてきた軍部の影響下にあるエジプト政権の方を、イスラエルが好むのは当然であり、この記事の信憑性は高い。かといってエジプトでイスラーム主義者の抵抗運動が強まることもイスラエルにとっては危険なので、上記のような対応になる。
 一方、アラブ首長国連邦は、エジプトの暫定政権に対し30億ドル(10億ドルは贈与、20億ドルは融資)を援助することで合意。サウジアラビアもエジプトに20億ドル貸与の見通し(エジプトのアハラム紙)。
http://english.ahram.org.eg/NewsContent/3/12/76096/Business/Economy/UAE-agrees-to-give-Egypt--billion-in-loans-and-gra.aspx

 「民衆の声に応える」と装った軍事クーデタ政権には、イスラエルやら湾岸専制君主諸国やら、抑圧勢力が次々に手を差し伸べる。サミール・アミンら左翼の有識者はこれでもなお、今回の政変を「人民の勝利」などと思うのだろうか。
高林敏之   投稿日時 2013-7-8 10:21
 従属理論で一世を風靡したサミール・アミンももはや「過去の人」の観あり。ムバーラク切りにより自らを温存し、軍部最高評議会のもとに文民統制から独立した軍部と、旧体制から改革されない司法機関による選挙されたばかりの議会解散などの妨害行為が生み出した、軍部・司法機関とモルシー政権との二重権力状態。その問題を完全に無視して、ひたすらモルシー政権とムスリム同胞団に責任を負わせる、典型的な都市インテリの論調。二重権力状態でどうやって「独裁」が可能だったというのか?
「大規模な不正選挙」というのは、最高憲法裁判所による違憲判決を招いた、無所属候補への議席割り当てに関する違反を指しているのであろうが、それは初の民主選挙が招いた制度的な不備による混乱。議席の3分の1を再選挙すれば良かったものを、最高憲法裁判所は議会自体解散してしまい、正常な立憲統治機構の確立を妨げたのである。
 何より、エジプト軍部こそが西側・湾岸諸国とイスラエルの確固たる同盟者として、米国の中東戦略やイスラエルのパレスチナ封じ込めに貢献してきた事実、従属的政策を進める政権の屋台骨であった事実を、この従属理論の大家はお忘れになってしまったのだろうか?「人民」の名により、そんな軍部の提灯持ちに成り下がった「左翼」の惨状は見るに堪えない。
 アミンに限らず、今回の政変に対するエジプトのエリート・知識人らの評価を見るにつけ(総体がそうだとは断定できないが)、過去数十年にわたり軍部が果たしてきた役割に対する冷静な判断力を失うほどに、イスラーム主義者を嫌悪していることが伝わる。国民の分裂が深まったことは確かだ。
新着コメント
  1. John ゲスト 2017-3-10 23:42
  2. jlgg ゲスト 2016-11-4 22:15
  3. John ゲスト 2016-9-25 22:51
  4. Re: Re: 忘却の穴」と安倍晋三――安倍の中東訪問と人質事件に関する私見/田中利幸 ゲスト 2016-6-1 18:14
  5. Re: ベーシック・インカムのすすめ/白川真澄 ゲスト 2016-4-26 19:19