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日本社会をそのまま映す橋下「慰安婦」発言

山口響
(ピープルズ・プラン研究所運営委員)
2013年5月14日記

 日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)が5月13日、日本軍「慰安婦」問題について、次のような発言をした。やや長いが、歴史に残る重要発言だと思うので、時事通信の報道に従ってその要旨を全文載せておく。

▽5月13日午前(大阪市役所で記者団に)

 敗戦の結果として、侵略だということはしっかりと受け止めなければいけない。実際に多大な苦痛と損害を周辺諸国に与えたことも間違いない。反省とおわびはしなければいけない。

 慰安婦制度というのは世界各国の軍は持っていた。なぜ日本の従軍慰安婦制度だけが世界的に取り上げられるかと言うと、日本は軍を使って国家としてレイプをやっていたという、ものすごい批判を受けている。その点については、違うところは違うと言っていかなければいけない。

 あれだけ銃弾が雨・嵐のごとく飛び交う中で、命を懸けて走っていく時に、猛者集団、精神的に高ぶっている集団をどこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度というものが必要なのは誰だって分かる

 今のところは、軍自体が、日本政府自体が暴行、脅迫をして女性を拉致したという事実は証拠に裏付けられていない。そこはしっかり言っていかなければいけない。ただ、意に反して慰安婦になった方に対しては、配慮はしなければいけない

▽5月13日夕(同所で記者団に)

 慰安婦制度は必要だった。軍の規律を維持するためには、当時は必要だった

 歴史をひも解いたら、いろいろな戦争で、勝った側が負けた側の方をレイプするという事実は山ほどある。そういうのを抑えていくためには、一定の慰安婦みたいな制度が必要だったということも厳然たる事実だと思う。

 (沖縄県宜野湾市の)米軍普天間飛行場に行った時、司令官にもっと風俗業を活用してほしいと言った。司令官は凍り付いたように苦笑いになってしまって。性的なエネルギーを合法的に解消できる場所は日本にはあるわけだから

 「慰安婦」制度が存在した歴史的事実そのものを否定する発言はこれまでも多くなされてきた。そのこと自体の問題性はすでに繰り返し論じられている(たとえば、アジア女性資料センターによるアピール)。

 あえて好意的に見るならば、否定論者たちは、「慰安婦制度みたいな悪いものがかつて日本にあったとすれば、それは恥ずかしいことだ」と心のどこかで思っているのではないか。だからこそ、「強制」の意味をあえて狭く解するなどのごまかしを積み重ねて、何とか歴史的事実をなきものにしようと、躍起になっているのだ。

 今回の橋下発言にも、この「事実の否定」の要素が入っている。しかし、そこからさらに一歩進んでより悪質なのは、<慰安婦制度があったってしょうがないじゃない、だって戦争やるためには必要だったんだもん>と開き直っている部分だ。

 「ひとたび戦争が起これば、ある程度のことは我慢しなければならない」と言わんばかりの論理を目の当たりにして思い出すのは、厚生省(当時)が設置した「原爆被爆者対策基本問題懇談会」(基本懇)が1980年に出した答申の次の一節である。

 およそ戦争という国の存亡をかけての非常事態のもとにおいては、国民がその生命・身体・財産等について、その戦争によって何らかの犠牲を余儀なくされたとしても、それは、国をあげての戦争による「一般の犠牲」として、すべての国民がひとしく受忍しなければならないところであって、政治論として、国の戦争責任等を云々するのはともかく、法律論として、開戦、講和というような、いわゆる政治行為(統治行為)について、国の不法行為責任など法律上の責任を追及し、その法律的救済を求める途は開かれていないというほかはない。

 これは「受忍」論と呼ばれる考え方で、平たく言えば、「戦争なんだからしょうがない。我慢しなさい」と被害者にあきらめを迫る論理である。

 しかし、これだけでは被害者が「かわいそう」なので、前記答申は続けてこうも書いている。

 もっとも、このような犠牲者に対し、現代福祉国家の理想に基づき、その平和な生存を保障する措置の一環として、種々の救済策を講ずるかどうかは、別に考慮に値する問題で、社会的公正を確保する見地からいって、それは望ましくかつ意義ある措置ということができよう。こういう見地からいえば、戦争損害の一環としての広島及び長崎における原爆被爆者の損害に対し、政府が被爆の実態に即応した対策を講じてきたことは、一応評価しなければならない。

 「国に責任はないけど、かわいそうだから助けてあげる」ということだ。今回、橋下は、「ただ、意に反して慰安婦になった方に対しては、配慮はしなければいけない」とも言っている。その意味で、橋下発言と原爆基本懇答申とは同じ論理の上に立っている。

 こうした基本認識をベースとして、お慰み程度の支援が一部の戦争被害者に対してなされる一方で、日本国家は戦争を起こした責任を認めず、ほとんどの被害者を放置してきたのである。

 橋下発言の問題は、それが「暴言」だという点にあるのではない。それが、本来は否定さるべき「暴言」であったなら、どれだけよかったことか。しかし、残念ながら、橋下の論理は、戦後日本社会のスタンダードそのものだったのである。

 しかし、そのことに何の痛痒も感じず、記者の目前でペラペラとしゃべれてしまう政治家が出てきたことは、とりわけ安倍政権誕生以降の日本社会の大きな風向きの変化を示している。このような人物がのさばっていることを、私は許しておけない。
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コメント一覧

ゲスト   投稿日時 2014-8-19 11:57
朝日新聞の捏造に立ち向かって、どんなバッシングにも負けず抗議し続けたのは橋下氏だけだった。
さんざん叩きまくったマスメディアはこれからどう責任とるんだ?
ゲスト   投稿日時 2014-3-30 23:04
元売春婦の証言はつじつまが合わず、強制連行の証拠もみつからない。それでも人道的な理由から、金泳三が日本に賠償をもとめないと宣言し、河野が謝罪して、てじめをし、日韓の友好的発展をとげることを、確認しあった。しかし、韓国側の詐欺行為により、日本に賠償要求が再開した。要するに、両班の身勝手な被害者意識や事大主義や、小中華妄想をひきずる韓国にとっては、日本との関係改善は望ましくないということなのだろう。日本と仲良くすると、韓国国民は潤うが、政治家は、政治生命を失うから。
ゲスト   投稿日時 2014-1-31 5:44
売春宿がだめなのか
強制連行がだめなのか

売春宿がだめだと言うのなら、今なお世界中に売春婦を送り出している韓国政府は、反省をして問題の改善にあたってください。

強制連行がだめというのなら、強制連行の証拠を示してください。
見たことのある証拠資料は、当時敵であったアメリカが記録した、強制性は無い、高級売春婦という資料のみ。
このインターネット社会で強制されたという証拠は見たことがありません。
ちなみに証言は話す度に内容が変わっていて、時代が朝鮮戦争だったりします。朝鮮戦争であれば加害者は韓国政府とアメリカ政府です。
さらに言えば、米兵は敗戦後の日本で民家に押し入りレイプするというのが横行していました。
アメリカは核兵器で民間人を何十万人も焼き殺しています。
アメリカは一度も謝罪することなく、正しい事をしたと教育し、戦後賠償をした日本を責めていますが、怒りを覚えます。
ななし   投稿日時 2013-12-21 12:00
韓国と日本のニセ人権派に問題があると思う。共産主義者の子女が売春にかかわることになったなど、日本の責任はあるだろう。しかしまじめに対応するのなら、人数は正確にすべきだろうし、真剣に対応すれば、もう少しまともな資料がつくれただろう。韓国が人権と戦っているのなら、フィリピンやモンゴルでの韓国人よる売春斡旋業を韓国政府が放置するのは理解できないし、ベトナム問題に関しては隠蔽さえしている。韓国は日本の内地だったから、敵地インドネシアと同じではない、終戦直後の連合国の御都合主義は賞味期限切れなので、真面目な調査をすべきだ。少女狩りを規模こそ違えど実行したのは韓国で、済州島事件や朝鮮戦争時に行ったようだ。日本はどこで誰を拉致したのか?史実を一つも私は知らない。少女像には、モデルになった不幸な女性の名前が刻まれていない。
ヨッシー   投稿日時 2013-9-22 0:36
飲み屋での話しとして「慰安婦制度は当時必要だった」とか、「米兵に風俗の活用を勧めれば」ということならばともかく、マスコミや米軍司令官の前において一つの大きな自治体の責任者が語った発言ということで考えたら明らかにアウト。
なんでもかんでも自分の立場を弁えることなく、自分の云いたいことを云っていいというわけではない。特に政治家であれば余計に。

例えば、風俗の活用についても、面と向かって云われたらそれは自分達の兵士をバカにされたと受け取られても仕方のないことであり、相手を侮辱していることにもなってしまうのが現実。
「お前達の国の兵士は理性で性欲をコントロールできない連中が多いので、風俗でも活用して性処理しろ!」といってるようなものだから。

とにかく、橋下の発言にはデリカシーや相手がどう感じるのかという創造力が欠如している。
ゲスト   投稿日時 2013-7-17 22:04
70年以上も前の事を、今の人権意識で断罪しようとするなどあってはならないのでは。当時の人々にとっては、慰安婦の存在はごく普通のこととしか認識してなかったのではないのか。当時朝鮮におられた兵隊さんも、部隊の周りには朝鮮人が経営する多くの売春宿があり、売春婦もごくごく普通にいたと証言されている。売春婦の多くは貧困などで仕方なく身売りされてきたかわいそうな立場の人であったことを、当時の兵隊さんもわかっていたはず。だけどそれは仕方のない日常であったのでは。今の判断基準で当時が悪かったと断罪するのは韓国の好きな遡及法だと思うのだが。
あんたは間違っている   投稿日時 2013-6-26 21:42
誰も「慰安婦」の存在は否定していない。実際はありもしなかった国家による強制連行と戦後の造語である「『従軍』慰安婦」を否定しているだけだ。

また、なぜ女衒が行った不法行為を国の問題として糾弾するのか?確かに一部の不心得者が行った強姦や拉致はあったがそれは個人の犯罪。これらは発覚すれば処罰された。

当時軍は慰安婦は本人の意思によらず募集しないよう通達を出していた。慰安婦制度は公娼制度の延長にあり、強姦などを防ぐ目的で行われた。慰安婦制度を非難しているがソ連軍や韓国軍のようなレイプ野放しのほうが良いとでもいうのか?

韓国人は挺身隊と慰安婦の区別もつかず、意図的に誤用して宣伝しているが、当時彼らは日本人だったことを忘れているのではないか?

事実を真っ当に評価することを望む。(とはいっても反国家左翼に染まった輩にこの分を承認する度量はないだろうが・・・)
ゲスト   投稿日時 2013-6-22 11:30
要旨を全文…
折角なら原文を全文載せましょうよ
石垣敏夫   投稿日時 2013-5-19 11:09
根源は侵略戦争と外国人基地です。
二度と戦争をしない、外国人基地を置かない、ということを
はっきり訴えるべきです。
SUG   投稿日時 2013-5-14 23:15
橋下代表の発言は、慰安婦の問題は日本だけに向けられる問題なのかと言っていると捉えます。
各国が自国軍にも同様なシステムがあったことに対するコメントを一切避け、
この問題を日本特有のものにしたて、自国の責任をカモフラージュしている現実に真摯に向き合っていくべきと考える。

この研究所の目指すところはそこであり、過去日本が積み上げてきた自虐的思想へと国民を誘うことではないと考えます。