メニュー  >  【原発を読む】『プロメテウスの罠』/天野恵一
『反「改憲」運動通信』第7期No.21(2012年4月4日号)
【原発を読む】『プロメテウスの罠』

朝日新聞特別報道部 著、学研パブリッシング 刊/1238円+税

天野恵一

 〈3・11原発震災〉から1年たつ今、この終わりなき「事故」をめぐる恐怖のドラマの〈真実〉を明らかにする作業が、さまざまになされている。

 インチキ操作報道づけの日々を生かされ続けてきた私たちは、あらためてなされる検証報道自体がインチキの上塗り、すなわちさらなる操作のためのものである可能性を充分に配慮しながらそれを受けとめ、検証報道自体を検証していかなければなるまい。もちろん私たちには、まったく手ぶらでその課題を果たすことは不可能だ。操作(インチキ)報道製造元の政府・マスコミがたれ流す情報の仲に、少しずつ存在する、その大きな操作に抗う質をもった情報を発見していく努力こそが必要なのである。たとえば、事故発生直後の菅首相(当時)の場あたり的で御都合主義な「イラカン」の対応が事態の混乱を拡大したという検証報道が、この間大量に流されているが、これはどの程度〈真実〉なのだろうか。

 こうした問題を具体的に再検証するためには不可欠な「情報(分析)」として「朝日新聞社特別報道部」による連載「プロメテウスの罠」に注目していた人は少なくあるまい。私の身のまわりでもこの間、それは話題にされ続けていた。この具体的な関係者取材のつみあげに基づく、〈真実〉にせまるレポートを読んでいた人間ならば、菅が危機管理の手法のイロハもわきまえない無能な首相であったことは事実であるが、事故におびえ、すべてを投げだしてしまおうとした東電トップの信じられない無責任ぶり、首相にすら重要情報を告げないで平然としていた原発「官僚」リーダーたちのハレンチな無策ぶりの渦の中で、菅が右往左往していたという事態についての具体的なイメージを手にすることができる。だとすれば、菅(たち政治家)の東電や安全委員会の委員長などに向けられたあの時の怒りは、その限りではまったくあたりまえであったことはよく理解できるのだ。そうだとすれば、この間の菅の無能と御都合主義の「イラカン」体質に、すべての混乱と無策(というより、被曝を拡大した許されない誤策)の責任をなすりつけているキャンペーンは現在の政権や官僚たちが自分たちの責任を隠蔽するために新たに仕掛けた政治操作であろうことは、よく読めるはずである。

 この貴重な連載(それは現在も連載され続けている)を本にまとめたのが『プロメテウスの罠─明かされなかった福島原発事故の真実』である。2011年10月3日から2012年2月6日まで掲載された分を加筆してまとめた、この本のモチーフは「あとがき」ではこう示されている。

 「世界有数の地震国になぜ50基を超える原発ができたのか。なぜ深刻な事故が想定されなかったのか。事故が起きたとき、なぜ十分な対処ができなかったのか。なぜ住民には情報が届かなかったのか。官僚は、政治は何をしていたのか」。

 こういう誰しもがキチンとつかまえておかなければいけない問題が、トップたちの上からの視線ではなく、被害にふりまわされ、命をオモチャにされ続けている日本列島の住民のほうの視点から追及されている。二冊目の単行本化がまたれる、反原発運動必読の一冊。
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